米国のオバマ大統領が4月に日本を訪問する。今回の訪日では、日米両国間の切迫した諸課題に加えて、米中両国関係の新しい概念「新型大国関係」を安倍晋三首相との間で語る見通しが強くなった。

 オバマ政権は、米中両国が共に大国として特別の絆を結び、国際秩序の運営に主導的な役割を果たすという「新型大国関係」を受け入れる形となってきた。そうなると、日米同盟への大きな影響も不可避となる。日本としても当然、その新たな動きの真意をオバマ大統領に問うことが必要となるわけである。

 オバマ大統領の訪日では日米両国間の共同防衛強化の諸策や日本のTPP加盟問題、さらには歴史関連課題などが語られる見通しだが、そうした日米両国だけの案件に加えて、中国との関係が主要課題の1つとなりそうである。オバマ政権側も、中国への新たな取り組みは当然日本側への説明が必要だと見なすだろう。

自国の「核心的利益」も認めさせようとする中国

 ブッシュ前政権の国務、国防両省でアジア担当の高官を務めたランディ・シュライバー氏は、3月19日、ワシントンの大手研究機関「ヘリテージ財団」が主催したオバマ大統領のアジア訪問を論じるセミナーで、オバマ・安倍会談の議題について次のように語った。

 「オバマ大統領は安倍首相に対し、米国がいま受け入れつつある中国との『新型大国関係』の内容について説明する必要がある。特に米中両国のそのような接近が、日本のようなアジアの同盟諸国にとってどんな意味があるのかの説明が不可欠となるだろう。その理由の1つは、中国側がこの新型大国関係という概念に自国の『核心的利益』を加えて、米国にそれを認めさせようとしているからだ」

 中国の唱える「核心的利益」とは、台湾、チベット、新彊ウイグル自治区などに対する中国の不可侵の主権主張である。米国を含めて他国はこれらの課題には一切関与するな、という宣言でもある。そして中国政府はその「核心的利益」に南シナ海での紛争諸島や東シナ海の尖閣諸島を含めるようになってきたのだ。