マット安川 ゲストに元外交官・佐藤優さんを迎え、緊迫するウクライナ情勢から米欧の動きまで、幅広くお聞きしました。月70本超の連載を持つ佐藤さんならではの、ロシアと中国の動向分析など盛りだくさんの内容です。

ウクライナ新政権の価値観は必ずしも欧米世界と相容れない

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:佐藤優/前田せいめい撮影佐藤 優(さとう・まさる)氏
元外交官、文筆家。インテリジェンスの専門家として知られる。第38回大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞した『自壊する帝国』の他、『獄中記』『国家の罠-外務省のラスプーチンと呼ばれて』『3.11 クライシス!』『人に強くなる極意』『元外務省主任分析官・佐田勇の告白: 小説・北方領土交渉』など著書多数(撮影:前田せいめい、以下同)

佐藤 ウクライナ騒動のひとつの原因は、ウクライナの西、ガリツィア地方の人たちが共有する強い民族意識です。

 ウクライナの東の人たちは19世紀、ロシアにロシア語を強制されて以来、ウクライナ語をしゃべれなくなりました。彼らの中には自分を広義のロシア人と考える人も少なくありません。

 それに対してガリツィア地方は、1945年までソ連やロシアの領土になったことがないこともあり、住民は上手にウクライナ語をしゃべる人たちです。大学でも教えていますし、ウクライナ語の新聞も雑誌も出ている。

 騒動の根っこにあるのは、彼らロシアを嫌う西の人たちと、それ以外の人たちの対立なんですね。

 ひとつ注意が必要なのは、今回ウクライナの政権を握ったガリツィア地方に基盤を置く勢力は親欧米に見えますが、必ずしも自由、民主主義、人権を重んじる人たちではないことです。

 第2次世界大戦中、ウクライナの人の200万人はソ連の赤軍に、30万人はナチスドイツ側に加わって戦いました。ユダヤ人に本当にひどいことをした後者の流れを汲むグループも新政権に加わっているんです。アメリカはそのへんをごまかしていますけどね。

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 一方、ロシアがしていることも褒められたものではありません。ウクライナにはロシア仕様の最新の兵器工場、宇宙産業の工場があります。

 新政権はEUに参加する構えであり、これが実現すればウクライナがアメリカと欧州の軍事同盟NATOに入ることになるかもしれない。そうなるとロシアの軍事機密が詰まっているそれらの工場を全部アメリカに押さえられることになります。

 だからロシアはウクライナに手を突っ込んで、彼らが西側に行かないようにしているわけです。