今年(2010年)3月26日に発生した韓国海軍哨戒艦「天安」沈没事件を受け、7月9日、国連安全保障理事会は「議長声明」を採択した。(敬称略)
韓国の哨戒艦沈没はなぜ起きたのか?
米国は「北朝鮮の犯行」を声明に明記すべきだと主張したが、北朝鮮の暴発を恐れる中国によって実現せず、結果的には北朝鮮に謝罪を要求することもなく、名指しで非難することすら避け、法的拘束力を持たない議長声明に落ち着いた。
北朝鮮はいつもながら関与を否定しているが、韓国側の調査結果や証拠物件から見るに、ほぼ北朝鮮は黒に違いない。いったい哨戒艦「天安」沈没事件は何を意図したものであろうか。
独裁者が交代する時、政体が不安定化するのは独裁政権の本性であり宿命である。金正日は2008年に脳卒中で倒れた。奇跡的な回復と言われたが現在も四肢に障害が残っているようだ。
また膵臓癌との説もあり、最近は記憶力の減退も著しく、後継者へのスムーズな権力移行は北朝鮮にとっての最優先の課題である。
独裁政権の後継者はすさまじい権力闘争に勝利しなくてはならない。また軍を頂点とする権力の掌握には正統性とともに実力の裏づけ、そしてカリスマ性が要求される。
後継者による器量の演出がテロを誘発する
血縁という金王朝の正統性はあっても軍隊経験や実戦経験がない場合、軍や政権右派を心服させるほどの実力や器量なんぞ望むべくもない。そこで後継者は往々にして荒唐無稽とも言える策謀を企み、「器量の演出」を謀ろうとする傾向がある。
金正日のケースを見てみよう。金正日は1974年2月の朝鮮労働党中央委員会において、政治委員会委員(現:政治局委員)に選出され、金日成の後継者として「推戴」された。
北朝鮮建国の立役者である父、金日成に比して実力もカリスマ性も劣る金正日は誰もが驚く強硬路線を自ら指令し、器量を演出しようとした。
1977年から始まった横田めぐみさんをはじめとする非道な日本人拉致事件、1983年の「ラングーン爆破テロ事件」、1987年の大韓航空機爆破事件は金正日が親筆指令を発したと工作員が証言している。
北朝鮮専門家によれば、これらは政権掌握のための「器量の演出」だったと言われている。