初めてビールを飲んでから、その味を楽しめるようになるには、ある程度の時間が必要。もちろん、そのようなビールの特徴は近年生まれたものではない。ビールが日本に普及した時からあったものだ。しかし、今と昔では状況が違うという。

選択肢の多さがもたらした「慣れ」の難しさ

 その1つとして青木氏が挙げるのが、ドリンクメニューの多様化。カクテルやサワーなど、甘くて飲みやすく、しかも提供までに時間のかからない酒が以前より増えた。その結果、これまでのような最初の乾杯にすぐ出てくるから「とりあえずビール」ということは少なくなったと言える。ひとまずビールを頼んで、飲み慣れるうちにその奥の「美味しさ」を感じるケースが少なくなったのだ。

 さらにもう1つ、消費者の行動変化も関わっている。

リクルートライフスタイル 
事業創造部 研究員 青木里美氏

 「デバイスの多様化やインターネットをはじめとするメディアの普及により、私たちが日常で受け取る情報はとても多くなりました。その中で、消費者は判断基準として自分の体験(1次体験)をより重視する傾向にあります。以前ならビールを飲むきっかけとして、先輩に勧められたり、周りの流れで、ということが、日常生活の延長線上に当たり前にありましたが、今はその機会が減少しています。ビールを飲むきっかけを、誰かが作らなければ、ビールを好きになったり、美味しいと感じられるようになる人は増えないかもしれない。そんな仮説を持ちました」(同)

 先述の調査でも、学生・社会人ともに、ビールを飲むうちに「その印象が悪化した」という人の割合は2%にも満たない。逆に「印象がよくなった」人の割合は、学生が25.7%、社会人は35.0%。飲む機会の増加・積み重ねでビールの美味しさが分かってくるのは明らかだ。

 1次体験が特に重視される時代においては、まず体験する機会をどう提供するか、が重要であり、機会がなければ、そのままスルーされてしまう。

「ビール無料」プロジェクトが生むマッチングの機会

 見方を変えれば、飲み慣れる機会を作り出すことで、若者がビールの「本当の美味しさ」にもっと気付く可能性もある。そこで、アサヒビールとリクルートライフスタイルは、2月3日から『ビアマジ!21』という企画を開始した。