ロシアの徴兵制が破綻の危機に瀕していることについては、小欄で以前、ご紹介した。

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モスクワの赤の広場をパレードするロシア軍空挺部隊の兵士〔AFPBB News

 この結果、ロシア軍の定数100万人に対して実際の兵力は80万人足らずとなっており、国防上の大問題となっているのだ。

 こうした事態に対し、ロシア政府も様々な対策を講じてはきた。

 徴兵逃れを防ぐための様々な予防手段に始まり、軍隊での生活環境を改善するためにすべての兵舎にシャワー室を設置(今までなかったというのも信じがたい話だが)、さらには食堂にサラダバーを付けることもまでした。

 とはいえ、徴兵制の破綻は若年人口の低下と徴兵逃れの蔓延という構造的なものであって、この程度で改善されるような問題ではない。

 このため、議会では、大学生への徴兵猶予を廃止したり、2008年に2年から1年間に短縮された徴兵期間を再び2年間へ戻すといった案が検討されたものの、国民の猛反発は必至であるため、いずれも実現しなかった。

無給か、有給か?

 とはいえ徴兵制が破綻状態にあるのは誰の目にも明らかであり、早急な対策が必要である。

 今年に入ってからほぼ全容が明らかになってきたロシア軍の人員充足対策は、おおよそ次のようなものであるようだ。

 その第1は、徴兵制への選択制の導入である。

 と言っても、ドイツのように、軍務に就くか、代替勤務として福祉活動などに服するかを選ぶといったものではない。

 現在、ロシアで議論されているのは、従来通りの徴兵(任期1年、無給)か、契約軍人(任期2年、有給)かのいずれかを徴兵対象者が選べるという制度だ。

 給料をもらえるオプションを用意することで徴兵逃れを抑制し、かつ、普通の徴兵よりも長く勤務してもらおうというわけだ。