現代日本の大きな問題の1つである少子高齢化は、農業ではさらに深刻な事態になっています。

 高齢で農業が続けられない人が増えるというならば、その分を専業の大規模農家に任せればいいじゃないかと思われる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、引退した農家の土地を借りて規模拡大を続けてきた大規模農家ですら、高齢化しているのです。

 そうした農家が引退しても、後継者となる跡継ぎなり別の大規模農家なりが引き受けられればいいのですが、多くの場合、後継者がいません。よって、大規模農家の1軒が引退したら地域農業が崩壊してしまうと危惧される地域がたくさんあります。

営農組合を作ってもコストを下げられない理由

 そんな崩壊が起きないように、営農組合を作り、疑似的な大規模農家を構成することがよくあります。地域の住民がパートタイムとして農作業を行って、なんとか農業を維持していこうとするわけです。

 ところが、これがなかなかうまくいきません。なぜなら、営農組合を作ってもコストを落とせるのは機械代くらいでしかないことが多いからです。

 10軒の農家が1軒あたり1町歩(約1ヘクタール)の農地を耕作するのに、これまで各農家がフル装備していた農機具を営農組合で共用するようになると、使用する機械は減らせます。例えば1軒が1町歩(約1ヘクタール)を耕作するのに、各農家が20馬力のトラクター(200万円)を計10台所有していたとしましょう。

 日本の農機が高価だと見られる理由の1つに稼働率の低さがあります。多くの農機が1年のうち稼働するのが数日から30日くらいなので、効率が良くないのです。しかし、営農組合を作って共用するなら10台を2~3台に減らすことができます。トラクターの耐用年数を20年とすると、これで年間70万から80万のコストダウンになります。他に何台かある農機を同様に減らせば、年間300万から500万くらいは落とせるでしょう。