2014年2月は、韓国の経済界にとっては「裁判の月」だ。財閥オーナーたちに対する判決が次々と出ているからだ。オーナーたちの最大の関心は、実刑判決かどうか。判決によって明暗が分かれている。
2014年2月11日、ソウル高裁は、背任などの罪で1審、2審で実刑判決を受けて拘置所生活が続いていたハンファグループの金升淵会長(キム・スンヨン=62)に対して、「懲役3年、執行猶予5年、300時間の社会奉仕活動」という判決を下した(2012年8月23日付記事「ハンファ会長に実刑判決、韓国経済界に激震」参照)。
ハンファ会長、ベッドに横たわったまま病院から法廷入り
それは異常な光景だった。金升淵会長は、この日、うつ病や糖尿病で入院中のソウル大病院から救急車で法廷に運ばれた。白いマスクをしてベッドに横たわったまま法廷に入ったのだ。
金升淵会長は、自分が偽名で大株主になっていた企業の業績が悪化したため、グループ企業に負債を肩代わりさせたなどとして背任や横領の罪で起訴され、2012年8月にソウル地裁から懲役4年、罰金51億ウォン(1円=10ウォン)の判決を受けた。さらに「法廷拘束」命令を受けて即刻拘置所行きとなった。
財閥総帥の経済犯罪は一般的に「執行猶予付き」の判決が出ることが多かった。実刑判決、それも即時拘束命令付きの判決で拘置所に入ったことは金升淵会長にとっては大きな衝撃だったようだ。ふだん、「財閥総帥」として何の束縛も受けない生活をしていた人間が拘束されると一気に弱ってしまうのか。
糖尿病が悪化し、うつ病に陥り、呼吸困難にもなってソウル大病院への入院と拘置所へ戻る生活を繰り返していた。
2013年の控訴審でも懲役3年、罰金51億ウォンの実刑判決を受け、法廷闘争は長期化していた。その後、大法院(最高裁)に上告し、破棄差し戻し判決が出てソウル高裁で再び審理することになったのだ。
韓国メディアによると、「執行猶予付き」の判決が出た瞬間、金升淵会長は突然眼を開き、何度も瞬きをしたという。傍聴していたハンファグループ関係者の間ではガッツポーズも見られたという。
韓国の財閥は、グループ企業の再編をする際、優良企業の資金を使って不良企業を処理する手法を頻繁に駆使してきた。今回のハンファグループの一件も、こうした手法が背任、横領に問われた。
では、1審と2審で実刑判決を受けた会長がどうして破棄差し戻し審では執行猶予付き判決に変わったのか。