大きすぎるサムスンの悩みがまた1つ表面化した。大卒採用試験にあまりに大量の志願者が詰めかけ、改革案作りを進めていたサムスングループだが、導入を目指した「大学(総長=学長)推薦制度」が大学などからの強い反発を浴びて、事実上の撤回に追い込まれてしまったのだ。

 就職戦線の頂点に立つサムスングループの悩みは深まるばかりだ(2013年10月16日付記事「9万人が受験したサムスン採用統一試験とは?」参照)。

人気過熱の入社試験、会社側と学生の負担を減らそうとしたが・・・

 韓国でのサムスングループ入社試験は、ここ数年、過熱気味になっていた。入社を希望する学生はまず、グループ全体の「共通1次試験」とも言えるSSAT(サムスン職務適性試験)を受験するが、この受験者数が1年間で20万人近くに達する一大行事になってしまった。

 漢字、語学、一般教養などで構成されるSSATはよく練られた試験だが、ペーパー試験には変わりがない。だから、準備すればするほど得点はアップする。過去問題集や専門の予備校が相次ぎ現れ、受験生の負担も馬鹿にならなくなっている。

 毎年、大規模な試験を実施するため、会場や試験監督員の手配も簡単ではなく、SSATを実施する費用だけで100億ウォン(1円=10ウォン)以上はかかるという。

 もちろん20万人もの学生がサムスングループを志願するのは、それだけ人気が高いということで、サムスングループの責任とは言えまい。それにしても、学生に巨額の試験準備費用の負担まで強いて選抜するというのでは、グループのイメージも悪影響が出ていた。

 「過熱する一方のSSATをサムスングループはそのまま続けるのか」。こんな批判が高まったこともあって、サムスングループも抜本的な改善策作りに乗り出した。

 2014年1月、サムスングループは「大卒社員採用方式」の全面的な見直し策を発表した。最大の目玉は、SSATの受験者を書類選考と大学推薦制度で大幅に減らすことだった。

 サムスングループは、10年以上前まで書類選考で受験生を絞り込んだ上でSSATを実施していた。しかし、「書類選考基準が曖昧だ」などの批判を浴び、「開かれた採用」をモットーに、SSATの受験生を絞り込まず、原則として志願者すべてが受験できるようにしていた。

 1月に明らかになった新制度では、この書類選考を復活させる。併せて、大学に学生を推薦してもらう制度の導入も決めた。大学推薦者は書類選考を免除し、SSATの受験資格を与えるということだ。