2013年10月13日の日曜日。ソウル南部の江南(カンナム)にある地下鉄駅。住宅街で普段は日曜日の朝は閑散としているが、この日は早朝から若者が続々と降りてきた。近くの学校を使って2013年下期のサムスングループ大卒定期採用試験が実施されたからだ。
全国各地、さらにニューヨークやロサンゼルス、トロントにも試験場が設置され、世界で9万2000人が受験した。この日のマークシート方式のグループ統一試験は「SSAT」と呼ばれ、いまや大学生の間で最難関の試験として有名だ。
2011年6万人、2012年8万人、そして2013年は9万2000人。この数字は韓国サムスングループの大卒定期採用試験(下期)への応募者数だ。秋入社の上期試験と合わせると17万人が応募した。
年間の受験者数は17万人、過去問集がベストセラーになる人気ぶり
この全員が受験する「SSAT」とは何か。
ソウル市内の大型書店に行くと、「SSAT対策」という広いコーナーがある。過去の問題や解説書などが何十種類も平積みになっている。
SSAT――Samsung Aptitude Test の略称だ。日本語訳すれば「サムスングループ職務適性試験」となる。
一体、1年間に大学生が17万人も受験するこのSSATとはどんな中身なのか。筆者は、試験日の3日前に、1冊の「過去問題集」を買ってみた。400ページを超える大冊で、価格は2万2000ウォン(1円=11ウォン)。決して安くはない。
レジで支払いをするとびっくりした。「この本を買うと、『SSAT模擬試験集』と『SSATネット講義の2万ウォン分の割引券』が付きます」と、模擬試験集と「2万ウォン」と印刷してあるクーポン券を渡された。こうなると、過去問の2万2000ウォンという価格が高いのかどうか分からなくなる。
書店の店員に聞いたら、「今度の日曜日が試験ということで、売れ行きは落ちているが、数週間前までは最もよく売れた本だった」という。
「SSAT」コーナーの横には、他の財閥の採用試験の過去問が並んでいる。
「HMAT」というのは、現代自動車グループ職務適性試験、「SKCT」というのは、SKグループ職務適性試験・・・といった具合だ。