2012年8月16日、韓国で財閥のオーナー会長に衝撃を与える地裁判決があった。ハンファグループの金昇淵(キム・スンヨン)会長に対して、ソウル西部地方裁判所が、背任や横領で懲役4年、罰金51億ウォン(1円=14ウォン)の実刑判決を下したのだ。
一体、何が衝撃的かと言うと、韓国はこれまで、財閥オーナーの犯罪には寛大だったからだ。
背任や横領など重大な経済犯罪で有罪になっても、「懲役3年、執行猶予5年」というのが判決の定番だった。
オーナー会長は、何事もなかったかのように業務を続ける。すると大統領が「国家経済のために」という理由で、「特別赦免」の措置を取る。
犯罪自体が「なかったこと」になるというのがお決まりのパターンだった。
ところが、ハンファ会長への判決は執行猶予がつかない「実刑判決」。これだけでも財閥オーナーたちにとっては、「厳罰」ではあった。
実刑判決に加えて「法廷拘束」という異例ずくめの判決
もっと異例だったのは、実刑判決に加えて裁判長が「法廷拘束」命令を出して、会長がすぐに拘置所に入れられたことだ。
韓国では、1審で実刑判決が出た場合、裁判長が被告人を拘束するか非拘束にするかを判断して命じる。実刑判決を受けた被告人が必ず拘置所に行くわけではない。今回は、「法廷拘束」命令が出たため、会長は即刻拘束され、ハンファグループの経営に重大な影響が出ることになった。
財閥総帥の犯罪に甘いことに対しては、韓国内でも批判が出ていた。特に最近になって、12月の大統領選挙に向けて有力候補が与野党を問わず、巨大化した財閥に対して何らかの規制を課す「経済民主化」政策を競い合うように発表している。「財閥犯罪に対する厳罰主義」も重点政策に入っていた。
司法当局も「財閥オーナーに対して寛大な判決が出ることは法の下の平等に反する」との批判に応えて、最近、経済人に対して厳しい判決を出していた。
ハンファ会長の裁判は、係争中の他の財閥オーナーの裁判にも影響を与える可能性があり、経済界は、当惑しながらも、震え上がっている。