去年の9月25日付のこのコラムで、私は自転車のマナーのひどさに触れた(「ドイツと日本、こんなに違うマナーの数々」)。

 自転車の横暴は目に余る。自転車は、「たいていすごいスピードで音もなく後ろから来て、人の横をぎりぎりですり抜け(略)、歩道で歩行者を脅かしていたかと思うと、そのまま車道に降り、今度は、車と一緒に道を横切り、横切り終わったら、今度は歩行者の横をすり抜けながら、横断歩道を走り、そのまま、また歩道に上がってジグザグと走り抜けていく」のである。

 だから、「日本で怪我をするなら、おそらく歩道で、後ろから来た自転車に轢かれてのことに違いない」と書いたのだが、その危惧がこのたび現実となった。ただ、怪我をしたのは私ではなく、友人のCだ。

ウォーキング中に自転車の車輪で骨が粉々に

 Cはウォーキングが日課で、夕方、近所の緑地などを、スマートなウエアで颯爽と歩く。日本にいるとき、私もときどき同行するが、前を行くCの姿は、スタイル抜群、動作機敏で、高校生と見まがうほどだ。

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英国・ロンドン中心部で車道を走る自転車(資料写真)〔AFPBB News

 そのCがお正月早々、夕方4時、夫と一緒に歩いていた。まだ暗い時間ではない。歩道に立ち、道路を横断するために右を見た。

 なぜ、右を見たかというと、その道路は一方通行で、車は右からしか来ないからだ。右を見た瞬間、左肩にものすごい衝撃を受け、何が起こったか分からないまま、2メートルも飛ばされた。左から来た自転車にはねられたのだった。

 自転車の主は40がらみの男性で、一方通行の道を逆走、しかも、右側走行だった。そして、車道から、猛スピードで歩道に上がり、なぜか、そこに立っていたCを見落として、激突した。2メートルも飛ばされたのは、Cが小柄で軽量だったからだろう。

 倒れ際にCは歩道に頭を打ちつけた。夫が駆け寄り、抱き起そうと思ったら、Cの左足首がぐにゃっと思わぬ方向に曲がった。自転車の主は、呆然と突っ立っていた。Cは本能的に、「動かさないで」と言い、その場に横たわったまま、救急車を待った。