しかし、使用が可能か、可能でないかにかかわらず、送電会社は、再生可能エネルギーの電気を買い取らなくてはいけない。市場の電力の値段は、供給が過剰になると、もちろん下がる。

 だから、電力が過剰な時期、ドイツの電力会社は、買った電気を捨て値で市場に出す、あるいは、酷い時には、送電線がパンクしないよう、お金を出して外国に引き取ってもらったりしている。

 オーストリアやオランダとしては、もちろん大歓迎。朝日新聞が言うように、「自然エネが火力などを上回る日も出てきた」などと喜んでいる場合ではない。

 しかも、さらにまずいことには、再生可能エネルギーの電気買い取りのための補助金は、すべて消費者の電気代に乗せられている。電気がたくさんできればできるほど、市場での電気の値は下がるので、買い取り値段と売り値との差が広がり、補助金、つまり、ドイツ国民負担は多くなる。

 だからドイツでは、電気が余り、電気の値段が下がれば下がるほど、消費者の電気代が高くなるという、絶望的な現象が起こっている。この救いようのないシステムを、日本は見習おうとしている。

“再生可能エネルギー至上主義”で身動きがとれなくなったドイツ

 前述の送電線の不足だが、送電線の設置がどれぐらい滞っているかというと、必要と言われている4000kmのうち、出来上がっているのは1割ほど。今はまだ原発が動いているのでどうにかなっているが、来年から、1つ、1つと原発を止めていかなければならないので、深刻な問題になるのは必至だ。

 そうなったらどうするのか? 南ドイツは、今のところ、再生可能エネルギーだけではその電力需要はとうてい賄えない。そうなると、火力に頼るほかはない。実は、ドイツは現在、火力発電所をたくさん建てている。

 火力発電の燃料は、ガスと石炭だけではない。ドイツでは褐炭の採掘も、また始まるもようだ。ドイツには、褐炭は捨てるほどある。それも、地表に露わになっていて、坑道を掘る必要さえない格安の炭田がたくさんあるのだ。

 最近になって、北ライン・ウェストファレン州で、2045年までの採掘が許可された。褐炭は、石炭よりもさらに空気を汚すが、背に腹は代えられない。すでに12年のドイツのCO2の排出量は、前年より1.6%増えた。

 再生可能エネルギーの問題は、いくら発電量が増えても、火力発電を減らせないことだ。

 風力と太陽光のエネルギーはお天気任せ。しかし、ドイツのような高度な産業国では、今日は風が吹かないので、電車も走りません、工場は休業ですということなど絶対にできない。停電は産業界が最も恐れる事態だ。一度でも起これば、ハイテク産業は雪崩を打ってドイツを後にするだろう。