先日、中国で日中関係を研究する専門家と会食する機会を得て、彼らが真剣に今後の日中関係を心配していることを知った。

 中国国内メディアではもっぱら日本批判を展開する彼らだが、私的な会食の場では、その見方は至って冷静であり、真剣に日中関係を見つめている。何よりも、彼らが日本国内の出来事について入念に情報を集め研究しており、日本の内情をほぼ完璧に理解していることに驚いた。

 それに対して、日本人の中国研究者は中国に関するミクロの情報を集めるだけで、中国という国の全体像をマクロ的に描き切れていない。中には、感情論を助長する論者も少なくない。

 日中の専門家に対しては、まず個人的な嗜好、すなわち、相手国が好きか嫌いかでこれからの日中関係を論じないように進言したい。重要なのは、グローバルな大局に立って論を展開することである。

 いかなることも表と裏の両面がある。弁証法的な見方でバランスを取るべきである。さもなければ、その偏った見方により世論がミスリーディングされてしまう恐れがある。

拙速に関係改善を急ぐな

 今の日中関係は決していい状態とは言えないが、両国の国民にとっては何の不自由もない。当面はこのまま自然の流れに任せた方がよいのではないだろうか。

 日中関係は友好的でなければならないと思い込んでいる人は少なくない。無論、真の友好関係を築くことができれば、それに越したことはない。だが、少数の人が無理して作った友好関係は真の友好関係ではない。そして、一部の団体のメンバー同士が個人的に仲良くなっても、両国民全体は必ずしも友好的な関係にはならない。

 今、日中両国の前には2つの障害がある。1つは歴史認識の違いである。もう1つは尖閣諸島や東シナ海の領有権を巡る対立である。

 ここで結論を先取りすれば、日中関係の改善は当面望めないだろう。