「保険大国」日本は終焉を迎えつつある。

 市場の成熟化、少子高齢化の進展、保険料の自由化・外資参入で競争が激化・・・。国内市場の頭打ちが必至だから、保険業界各社は閉塞感を打破しようと海外展開を本格的に模索し始めた。

 しかし、ライバルは世界の超巨大金融グループ。国内の競争図式をそのまま持ち込み、「ひ弱なサムライ」が単身で斬り込んでいっても勝ち目なし。発想を転換し、「ニッポンのホケン」を健康長寿社会の基本インフラとして海外に売り込み、官民一体で次世代の戦略輸出品として育成するよう提言したい。

最近の生損保による主な海外進出(買収)案件
2004年 三井住友海上 アジア損保事業包括買収 約650億円
2005年 東京海上 ブラジルのリアル・セグロス社買収 約600億円
三井住友海上 台湾の明台社買収 約350億円
2007年 東京海上 英キルン社買収 約1100億円
第一生命 ベトナムのバオミンCMG社買収 数十億円
2008年 東京海上 米フィラデルフィア社買収 約4500億円

出所:各種報道などに基づき筆者作成

「バスに乗り遅れるな!」海外進出ラッシュに沸く生損保業界

第一生命、新興国で展開加速

 国内損保業界では、最大手の東京海上ホールディングス(HD)がこの10年で1兆円近い海外投資を行い、欧米市場で業績を伸ばした。また、三井住友海上火災保険を中核とするMS&ADグループは「東南アジア地域最大の外資系損保」に成長。損保ジャパン率いるNKSJグループも2010年5月に総額2000億円の海外投資を発表し、早くも300億円でトルコの損保買収を決めた。

 その成果は業績に反映し、2009年度決算では、損保3大グループの当期利益合計約2400億円のうち、4割に相当する900億円が海外事業からもたらされている。

 一方、生保の海外展開では第一生命保険が一歩リード。2006年以降、台湾、ベトナム、タイ、オーストラリア、インドと矢継ぎ早に足場を拡大。2010年4月の株式会社化・東証1部上場の際も、狙いの1つに「新興国でのM&Aなど海外展開の強化による規模拡大」を掲げている。

 このほか最大手の日本生命保険は中国・タイ、住友生命保険が中国・ベトナムで事業拡大を急ぐなど、各社とも保障性商品の拡大余地の大きい新興国に照準を合わせ始めた。「バスに乗り遅れるな!」の号令が掛かると、横並び意識の強烈なこの業界は一斉に動き出す。