2013年11月6日、ソウル中心部に近いホテル新羅。改装を終えたばかりのサムスングループが誇る名門ホテルは、朝から普段以上の混雑ぶりだった。この日、サムスン電子が8年ぶりに大規模IR説明会を開催したのだ。

 世界IT(情報技術)業界の「勝ち組企業」の代表であるサムスン電子のIR説明会には、韓国内だけではなく、欧米や東南アジアなどからもアナリストたちが詰めかけた。その数は400人以上。別室では多数の記者も大画面でIR説明会の模様を注視した。

トップ7人が出席したほぼ1日がかりの説明会

 今回のIR説明は、サムスン電子にとって特別な行事でもあった。権五鉉(クォン・オヒョン)副会長、李相勲(イ・サンフン)最高財務責任者(CFO、社長兼務)のほか、スマートフォンなどを手がけるIM事業部門長の申宗均(シン・ジョンギュン)社長、テレビや家電などを手がけるCE事業部門長の尹富根(ユン・ブクン)社長や半導体メモリー、システムLSI、ディスプレーの事業の責任者である3人の社長など7人の経営トップがすべて顔をそろえたのだ。

 7人は、それぞれ約50分間にわたってサムスン電子の強さと未来戦略について詳細に説明した。ほぼ1日がかりの説明会で、配布されたプレゼンテーション資料だけでも300ページを超える。まさに「サムスン電子アナリストデー」となった。

 サムスン電子は、もちろん小規模のIR説明会は開催していたが、これほどの規模で開催するのは8年ぶりだ。一体どうしてこの時期に開催することになったのか。

 最大の引き金になったのは、2013年6月の「サムスン・ショック」と呼ばれた株価下落劇だった。外国系証券会社が、サムスン電子の最新型スマホの販売先行きが不安というリポートを出すや、株価が急落したのだ(2013年6月13日「証券会社のリポート1本でサムスン電子株急落」参照)。

 同じような内容のリポートが他の外国系証券会社から出たこともあり、サムスン電子の株価は1カ月間で15%も急落してしまった。

 2013年11月14日現在の株価は144万ウォン(1円=11ウォン)前後だ。年初の株価は157万ウォンで、サムスン電子の株価は年初水準から10万ウォン以上低い水準なのだ。

「過去最高益」では物足りなくなった投資家

 証券市場の評価は、サムスン電子首脳にとっては到底理解できないはずだ。というのも、サムスン電子は「アップルとの知的財産権訴訟」「スマホ飽和説」など、繰り返し出てきた懸念を跳ね返すような圧倒的な業績を叩き出してきたからだ。

 2013年7~9月期の業績は、売上高が前年同期比13%増の59兆800億ウォン、営業利益が同26%増の10兆1600億ウォン。売上高営業利益率は17%を超え、2四半期連続で過去最高益を更新した。

 にもかかわらず株価は期待通りに上昇してくれないのだ。