中国の「国家機密」が米国を悩ます武器となっている――。
中国当局が7月5日、中国系米国人の地質学者に「国家機密の不当入手」の罪状で懲役刑8年を宣告したことは、米国のオバマ政権や議会の対中姿勢を一気に硬化させた。
米側ではこのところ、中国が「国家機密」を外国の企業や政府への凶器のように乱用する傾向への警戒がちょうど高まっていた。
また、この地質学者に関しては、オバマ大統領自身が中国政府への善処を訴えていた経緯がある。今回の判決は、その訴えが完全に無視された形であり、米中関係全体をまた険悪化させることにもなりそうだ。中国の国家機密は日本にも直接の悪影響を及ぼし得る妖怪のような存在である。
2年半の身柄拘束のうえに予想以上の重刑
AP通信などによると、北京市第一級人民法裁(地方裁判所)は7月5日、中国系米国人の地質学者シュエ・フォン氏に対し懲役8年という重刑を宣告した。
中国生まれで米国籍のシュエ氏が、中国の石油開発に関するデータベースを不当に入手し、米国のコンサルタント会社に提供したことが国家機密保持法の違反やスパイ行為に当たるというのだ。
このデータベースが国家機密だったというのが中国側の主張だが、その機密の内容は明らかにされていない。またシュエ氏が入手する時点では国家機密扱いはされておらず、後から「あれは実は国家機密だった」というのである。まったく不透明で不合理な法の乱用と言わざるを得ない。
シュエ氏が中国当局に逮捕されたのは、2007年11月のことである。米国政府は同氏の解放を再三に要求し、2009年11月にオバマ大統領が中国を訪問して、胡錦濤国家主席と会談した際にも、シュエ氏の解放を求めていた。
だが中国側は頑として応じず、逆に、予想されたよりも重い刑罰を加えたのだ。オバマ大統領の面子は丸つぶれと言えよう。北京の米国大使館はさっそくジョン・ハンツマン大使の名で5日、声明を出した。