中国は、清朝の時代に朝貢をしていた国や地域を、「戦略的辺疆」と称し、本来は自国領であるべきものと主張している。その中には、琉球も含まれる。戦略的辺境の奪還は、習近平総書記が掲げる「中華民族の偉大な復興」にとり、領土回復という面での「復興」の象徴にもなっていると言えよう。

 そのため、いま中国では、このような「辺境」における軍事作戦について、軍関係のシンクタンクでは盛んに研究が進められている。その一端として、孫建軍、鄭衛国が主となり編纂し約20人の軍事戦略の専門化が記した「現代辺境作戦概論」(藍天出版、2012年)の関連内容を紹介する。

1 現代の辺境作戦における政治工作の一般的な特徴とその要求

 辺境地区の作戦は地理的環境が異なり、作戦行動への影響も異なるため、政治工作においては作戦地域の特殊な環境条件を留意し、その地域の特性に応じ思想工作や組織工作を適用し、人と自然の敵に勝利するよう参戦した将兵を激励し、最後の勝利を得なければならないとし、特に以下の諸点を重視している。

(1)現代の辺境作戦の動因は複雑であり、政治、外交、経済面での闘争と緊密に連携しているため、政治工作でも絶えず将兵の大局的判断を強化し使命感と規律意識を高めねばならない。

(2)現代の辺境作戦は通常突発し臨戦準備の時間はなく、戦場の態勢はめまぐるしく展開し、将兵の思想も素早く変化するため、政治工作も素早く効率的に実施し迅速な対応能力を高めねばならない。

(3)現代の辺境作戦の戦力は多元的であり、機動が困難で、指揮組織も複雑であるため、政治工作も思想と組織の指導力を高め、作戦部隊の安全を所定の水準に予定通りに保障しなければならない。

(4)現代の辺境作戦の環境は劣悪であり、闘争は惨酷酷烈であるため、政治工作に当たっては、頑強性を発揮し、将兵の指揮を鼓舞するため、その精神的支柱を強化することを第1の重要任務としなければならない。

(5)現代の辺境作戦においては区域により条件に差異があり、物資保障も困難であるため、政治工作においても主体性を強化し、各種の保障の中でも思想工作を積極的に行い、勝利を勝ち取るための有利な条件を作為しなければならない。

(6)辺境地区の敵の社会情勢は複雑であり、内憂外患がともに起こっていることから、政治工作においては群衆性を重視し、地区の社会の安定と後方の安全を確保しなければならない。