テレビドラマを見れば、主人公は当たり前のように高級住宅に住まい、街に出ればポルシェが得意満面に疾走する。シャネルやルイ・ヴィトンを身に着けるのも、都市生活者として当たり前のステイタスであるかのようだ。

 中国では、そうした「富裕層」があたかも現代中国のシンボルであるかのようにクローズアップされている。

 だが、そんな金持ちなど一握り。中国経済がいかに力をつけても、裾野には分厚い「持たざる層」が広がっている。

いよいよ覚醒した労働者階級

 2009年、中国では不動産価格が異常なほどの上昇をたどると同時に、物価高、官僚の汚職と格差がより顕在化した1年だった。

 都市部と農村部の収入格差は3.3倍以上、高所得者の上部10%の収入と低所得者の底辺10%の収入格差は20倍にまで開いてしまった。国有の金融企業に勤務する高級管理職の収入は、社会の平均収入の100倍以上とまで言われている。

 そして今年、到来したのは「労働者階級」の覚醒である。ついに格差の底辺が咆哮を始めたのだ。

 「ピンク色」に染まりつつあった中国が再び赤く染まろうとしているのか、中国ネット社会の奥からはそんな動きが見て取れる。毛沢東語録が復活し、スローガンが口ずさまれ、国家命題である「和諧社会」を盾に取り、あたかも新たな闘争が始まろうとしているかのようだ。

 多くの若い労働者を集める某サイトを覗くと、こんな書き込みが目につく。

 「毛沢東時代に主役だった労働者階級は、今や奴隷だ!」「労働者はすべての権利と地位を奪回せよ!」「対抗すべきは、中国の安価な労働力を利用し労働者を搾取する新生産階級である経営者と外資企業だ!」――。

 筆者にはその地鳴りが聞こえるようで、正直、鳥肌が立った。

 ホンダやトヨタ自動車という「日本のシンボル」で立て続けにストライキが発生したが、決してスケープゴートにされたわけではない。無慈悲な経営で知られる台湾系企業にも矛先が向けられ、国有企業でも、また某政府機関の中でもストライキは行われた。