「ベニスにはゴンドラ、ニューヨークにはイエローキャブがあるように、パリには2CV(ドゥ・シュヴォー)がある!」

フランスが誇る名車「2CV」の颯爽たる姿

コンコルド広場とエッフェル塔をバックに

 車好きの方ならご存じだと思うが、2CVとは、フランスの自動車メーカー「シトロエン」が作り出し、長く国民車として愛されてきた車種の名前。そのユニークなフォルムがパリや田園を行く様は、まさにこれぞフランスと言えるような風景である。

 既にクラシックカーの類に入る車種ではあるが、今でも愛用している人のいる現役で、とあるブルゴーニュの村でお会いした80代の女性などは、ワインレッドと黒のツートンカラーの「チャールストン」というモデルを毎日ピカピカに手入れして颯爽と運転していたりする。

 パリでこの2CVが数台連なって走っているのを目撃した時、私はコレクターグループの集まりか、何かのイベントだろうと思っていた。

 しかし、これが実は冒頭に掲げたキャッチフレーズを生み出した「4 roues sous 1 parapluie(キャトル・ルー・スー・アン・パラプリュイ)」という会社の活動のワンシーン。つまり、この会社が展開する2CVを使ったハイヤーサービスの1コマだったのである。

 創業者は、フロラン・ダーニーという30歳の男性。2003年に始めたというから、弱冠23歳での起業である。

両親から借りた2CVが旅先で注目集める

4 roues sous 1 parapluie の創業者、フロラン・ダーニー氏

 そもそも彼は、パリのビジネススクールの学生で、当時既に、自ら何かビジネスを起こしたいという志を抱いていた。

 在学中、しばらくドイツはベルリンへ行くことになった時、旅の足として両親が2CVを貸してくれたのだが、これが行く先々で大好評で迎えられ、初対面の人たちともこのおかげで簡単にコミュニケーションができたという。

 さらに、イギリス、オランダに足を延ばした時もまたしかり。そして、1年後にパリに戻り、やはりこの2CVに乗ってコンコルド広場の赤信号で停車していると、ツーリストが寄ってきて、彼の車を写真に収めるという一幕が・・・。

 これらの体験が基になり、彼の卒業後の新ビジネスは決まった。2CVをツーリズムの世界で生かそう、と。2003年秋、記念すべき第1号車を購入し、彼自身が運転することから、この会社の歴史はスタートした。