中国は習近平国家主席、李克強首相という新指導層を迎え、国家や社会の開放、改革の方針を宣言した。しかし現実には共産党独裁による国民の人権の抑圧や自由の制約は従来よりもさらに悪化した――。

 米国の議会と政府が一体となった政策諮問機関「中国に関する議会・政府委員会」がこの10月中旬に発表した2013年度の年次報告が以上のような総括を打ち出した。

 320ページにわたる同報告は中国での宗教の自由、女性の地位、少数民族の権利など19の具体的な分野に光を当て、そのすべてに世界人権宣言など国際的規範に反する抑圧が存在する、という結論を明記した。中国のこの種の現状には中国当局から靖国参拝や歴史認識で道義的な非難を浴びる日本としても最大の関心を向けるべきだろう。

 「中国に関する議会・政府委員会」は米国の立法府と行政府が一体となって、中国の人権や法の統治の状況を調査し、公表して、米側の対中政策の指針にするという目的で2000年10月に設置された。

 議会側では民主、共和両党の上下両院議員が常に十数人、政府側からは国務省、国防総省、商務省、労働省などの10機関ほどの代表が加わる。現在は委員長がシェロッド・ブラウン上院議員(民主党)、共同委員長がクリス・スミス下院議員(共和党)で、専門スタッフを使って、中国側の実情を調査する。その結果はほぼ毎月の公聴会や調査発表で明らかにされ、さらに年次報告で総括される。

激しくなってきた独裁統治の抑圧・弾圧

 さて中国の人権状況は2013年9月までの1年ほどにどのような実態を示したのか。

 同報告は総括として以下のような諸点を指摘した。

・当委員会は中国当局が習近平、李克強らの新指導体制下で自国民の表現の自由、結社の自由、宗教の自由、共産党の権力の緩和、法の統治の確立などに関して前進がないことを認識した。新体制のスタート時には、改革や開放、当局の権力の制限を示唆する公式の言明がなされ、中国全土にわたって、期待が表明されていた。しかし新指導部はすぐに人権尊重や法の統治の確立を求める動きを弾圧し始め、公共事案に対する共産党の支配を再宣言するようになった。中国はその結果、基本的な人権の保障や政治的な改革のないまま、経済の近代化だけを追求するというこれまでの路線を継続することとなる。

・新指導部は多方面での抑圧の緩和や自由の拡大を言明し、特に憲法の遵守や汚職の追放を強調したが、2013年春までにはその種の公言を実行しないことが明白となった。同年9月までには当局は許志永(北京郵電大学の法学部教授で憲法学者)や郭飛雄(広東省の著名な民主活動家)を含む約60人を逮捕、拘束、あるいは「失踪」させて、表現の自由、結社の自由を弾圧した。