干物屋さんが軒を連ねる風景は熱海のイメージの1つ。観光客向けの土産物店に限らず、熱海では個人のお魚屋さんでもスーパーでも干物を目にしないことはない。地元産のものばかりではないものの、時期を問わず手頃な価格のものが揃っているのを見ると普段の食卓に欠かせない定番のおかずのようだ。

塩サバとじゃがいものグリルがメインのランチ。スライスして水にさらしたじゃがいもをじっくりオーブンで焼いてから、塩サバをのせて、黒こしょうとオリーブオイルをかけてから再びオーブンへ。塩サバがこんがり焼けたら出来上がり(写真提供:筆者)

 お店を始めてすぐ「やっぱり熱海のひとはお魚が好きなんだなぁ」と感じた。とにかく魚の食べ方がきれい。

 割と小さめのサイズの魚を出しているからとも言えるだろうが、頭やしっぽ、骨まできれいに食べてしまうお客さんが多いことに驚いた。

 お客さんが喜んでくれるのなら、と魚料理も積極的にメニューに加えるようにしている。

 いくつかある魚料理の中でも人気があるのが塩サバとじゃがいものグリル。脂ののったサバの旨みがほくほくのじゃがいもにしみて、ごはんも進む。

 おいしさの秘訣は生サバではなく干物を使うこと。網代にある〆竹商店さんの塩サバがいい味を出してくれるのだ。 

網代で3代続く干物店

毎朝ご両親と富岡さんの3人で魚を開く。塩水に漬けた後、天日干しする(写真提供:富岡さん)

 熱海市南東部に位置し、伊東市と隣接する網代は古くからの漁師町。大型ホテルや高層マンションが立ち並ぶ熱海市内とは雰囲気も一転、のどかな海辺の町の風情を楽しめる。

 海岸沿いの国道135号を海側に折れ、個人商店や住宅が並ぶ路地の奥に〆竹商店は事務所兼自宅、干物の加工場を構えている。

 創業から3代目となる富岡雅人さんがご両親とともに営む干物店だ。毎朝セリが行われているという網代漁港がすぐ近くに見える。