7月7月、米大リーグの4人の野球選手が、50試合から最長211試合の出場停止処分を受けた。

 211試合出場停止という最も重い処分を受けたのは、ニューヨーク・ヤンキースのスーパースター、アレックス・ロドリゲス選手。米野球史に残る名プレイヤーと言われた彼の名声はあっという間に地に落ちた。

 他にもミルウォーキー・ブルーワーズのライアン・ブラウン外野手や3人のオールスタープレイヤーが処分を受けた。

 理由は禁止薬物を使用していた疑いが濃厚だということだ。運動能力を向上させるための薬物で、男性ホルモンの一種、「テストステロン」と「ヒト成長ホルモン(HGH)」の2種類が今回のメジャーリーグによる調査の対象禁止薬物だった。

 一斉処分となったきっかけは、フロリダ州にあるアンチエイジング専門のクリニックに捜査が入ったことだった。アンチエイジングの看板を掲げながら、裏でスポーツ選手にHGHなどの運動能力向上の薬物を不法に与えているという内部告発があったのだ。

 この調査で芋づる式に超有名選手の名前が出たという。野球ファンの間に、動揺、失望、怒りが嵐のように巻き起こったことは日本でも報道された通りだ。

 しかし、このスキャンダルでにわかに予想外の注目を浴びたのは、全国に急増しているアンチエイジングクリニックの存在と、その利用者たちだ。

 スポーツ界では禁止されているが、一般人は合法的に利用できるテストステロンやHGHは、いつまでも若々しくいたい老人たちに「魔法の若返り薬」と呼ばれており、これらを利用した若返りホルモン治療の市場は、毎年3倍とも言われるほどの急成長を遂げている。

爆発的な成長が見込まれる米国アンチエイジング市場

 70代、80代という年齢の男性がホルモン治療を受け、首から上は老人だが体は20代のボディビルダーのように筋骨隆々となった「スーパー老人」が現れている。野球界スキャンダルによって広く知られるようになった、老いつつあるベビーブーマー世代の希望の星だ。