「申立人は、電話でカンボジアのアパートメント(共同住宅)の購入を勧められた。(中略)契約書にサインした後、現金150万円を渡した。帰宅後、契約書を確認すると、カンボジアのアパートメントを3m2購入したことになっており、申立人の認識と異なっていたことなどから、解約及び返金を求めたが、相手方が応じず、紛争になった」
カンボジアの不動産取引に関するトラブルの相談が急増
今年7月18日、東京都消費者被害救済委員会に、「カンボジアのアパートメント売買契約に係る紛争」の処理が付託された。
東京都消費生活総合センターのリリースによると、都内消費生活センターに寄せられるカンボジアの不動産取引に関する相談の数は、2010年度まではゼロであったが、2011年度には32件、2012年度には279件と急増している。
急成長する新興国で、まず最初に“来る”と言われる不動産と株式への資金流入と価格の急騰。それをあて込んだ有象無象の投資話や儲け話がはびこり始めるフェーズに、カンボジアもいよいよ突入したということだろう。
自らリスクを取って新興国不動産の勃興に賭ける投資家が増えることで、新興国にマネーが流入し、それに触発される周辺・裾野産業への波及効果も含め、経済が広範に活性化する。
新興国に身を置く者として、その経済活性化サイクルはおおいに賞賛されるべきものと考えるが、前述の生活センターに寄せられる相談内容や、現地で伝え聞く“疑義ある不動産話”を垣間見るに、どうも“リスクの取り方(取らされ方)”に問題があるようだ。
そもそも、不動産を買おうとしている取引相手(つまり売り主)が、本当に現在その不動産を所有しているのか、その不動産物件は登記上はどういう権利関係になっているのか、借金の担保に供され、抵当権が設定されていないか等々。
日本での取引であれば、事前に把握・確認されていて当たり前の前提条件のような諸事項が、「カンボジアはまだまだ後進国でルールが未整備だから」という理由で素通りされ、お金だけが動いていく。
「これから大規模開発が始まるあの土地は、現地の某有力者が押さえている。今ならいい条件で日本人に一部を譲ると言ってくれている。ルールがまだ整備されていない今だからこそ乗れる儲け話。今押さえておかないと、もうチャンスはないですよ・・・」
果たして本当にそうだろうか。