「イランは、イラン!」と外交関係を絶っている米国も含め、全世界が固唾を呑んで見守った先月のイラン大統領選挙。その結果に「え、本当・・・」と驚きを隠せなかったのは私だけではないように思う。
大半の予想を裏切り、保守穏健派のロハニ師が決戦投票を待たずに圧勝、“民主主義が死んだ”と称されたイランでの「過激、強権主義政治に対する勝利」と世界のメディアが一斉に報じたのは記憶に新しい。
東南アジア経済の「優等生」は、民主化では「劣等生」?
時を同じくして、これまで中東・イスラム教国で唯一の民主国家としてEU加盟交渉中のトルコは民主国のリーダーとして存在感を示してきたが、強権主義的で派閥を超えた独裁者と批判されるエルドアン首相の退陣を求める民主化運動が続いている。
2010年12月のチュニジアの抗議活動、ジャスミン革命が発端でアラブ世界(イスラム圏)の民主化活動に発展したアラブの春――。あれから3年半。その民主化の動きは、アジア諸国へと波及している。2013年は“アジアの春”をも呼び起こすかもしれない機運が高まっている。
民主化要求の強い中国では、中国広東省の地元紙、「南方週末」の記事を当局が改竄した問題で、国内メディアだけでなく、大学教授等の知識人も政府批判を展開。米国務省も中国政府のメディア検閲を非難している。
当局が事態収拾を図り、現在、事態は一応“消炎”したように見えるが、根底のマグマは根強くくすぶっており、メディアや国民の不満は払拭されるどころか、今後、“火山爆発”が起きる可能性もゼロではない。
他のアジア諸国はというと、とりわけ、韓国、台湾、フィリピン、インドネシア、タイは民主化を積極的に進めてきた。
一方、1人当たりの名目GDP(国内総生産)がアジア一の超リッチなシンガポールや、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国ではシンガポールとブルネイに次ぐお金持ちのマレーシア(2012年)は、1990年以降、年率5%を超える経済成長を続け、1人当たりのGDPが1万ドルを超え、「東南アジアの優等生」の名をほしいままにしてきた。
マレーシアの1人当たりのGDPはASEANで第4位のタイの2倍近くで、石油や天然ガスなど天然資源にも恵まれ、東南アジア屈指のリッチな国。しかし、その目覚しい経済発展の影で、同2カ国はASEANのツートップでありながら、”真の”民主化は出遅れている。
シンガポールは、一般的なイメージでは政治も街中もクリーンで、今年5月末に発表されたIMD(国際経営開発研究所、スイス・ジュネーブ本部)の国際競争力指標ランキングでは世界5位(2010年1位、2011年3位)。世界の投資誘致ではエリート的存在で、アジア屈指の人気観光スポットでもある。
しかし一方では、50年近くの長期にわたり単独与党政権が存続し、デモ行進や反政府行動は原則禁止制限され、主要メディアは政府系で、政府批判は国外退去となる場合が通例。5月には、マレーシアの選挙結果を不当とし集会を開催したマレーシア人ら21人が逮捕され、起訴された。また、別件で、一部、就労ビザの取り消しも行われたという。