実現すれば、クアラルンプール-シンガポール間を90分以内の「”夢”の陸の旅」で満喫できることになる。受注には、日本を含め、ドイツ、中国などの鉄道会社が熱い視線を注いでいる。
このように地理的、経済的に切っても切れない関係の両国にとってのアキレス腱は、政治・政権の不安定。
しかし、1957年の英国からの独立以来、56年間の半世紀以上にわたって一党支配を続ける“世界最長の民主政権(選挙投票で選出された政権)”を維持してきたマレーシアでもここ数年、政治的異変が続き、世界有数の親日国で、エネルギーや貿易分野の重要なパートナーであるマレーシアの動向は、日本を含めた周辺地域や欧米社会の注視を集めてきた。
日本にとって中国牽制でも重要なパートナーのマレーシア
日本は安倍晋三首相が参院戦後、7月末にもマレーシアを訪問予定。前回の首相時代にもキヤノンの御手洗冨士夫会長(当時、経団連会長)など財界人らと同国を訪問した安倍政権にとって、日本は中国、シンガポールに次ぐマレーシアの重要な第3の貿易相手国。
また、マレーシアは、南シナ海の南沙(英語名:スプラトリー)諸島領有権において中国と対立しており、「利害共有の戦略的パートナー」として認識される。南シナ海で中国と領有権問題を抱える関係国と連携を強化することは、「日本の安全を“外交”で」「デフレ脱却で“経済”を」、との政権使命において重要課題の1つ。
7月23日から3日間、マレーシア・ボルネオ島で開催される環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉(交渉全期間は15日から25日)に、日本は初参加する。日本企業の国際的競争力増強を促すTPP参加実現は、安倍政権の成否を占う試金石になるのは必至。安倍首相とマレーシアのナジブ首相の首脳会談(予定)では、アジア圏の安全保障の問題を含め、TPP問題などの経済連携についても話し合われる見通しだ。
ホスト国のマレーシアは日本の交渉初参加を後押しし、日本のTPP参加歓迎を早々に表明しており、日本は、安全保障だけでなく、経済連携の両面から、中国を牽制するのが狙い。

日系企業進出も30年以上の安定成長を続け、経済成長が著しくインフラも整備されているマレーシアは、2015年の経済統合を目指すASEANの中でも、「チャイナリスク」を抱える日本経済の再生を目指す上で重要なパートナーである。
特筆すべきは、マレーシアは日本人の長期滞在(ロングステイ)で、2006年から2012年の連続7年間、世界で一番人気の国となっている(ロングステイ財団発表)。
特に最近は、子供の教育移住を目的に30代、40代の家族での長期滞在が急増していることも新しい傾向だ。