アリシアさんは、要介護者宅で介護人として働いている。故郷ポーランドを離れて住み込み生活をするのはつらい決断だったが、月収1000ユーロ(約13万円)という報酬に魅せられてドイツにやって来た。

 ところが、要介護者の家族はアリシアさんを紹介したワルシャワのエージェントに月額2500ユーロ(約32万5000円)を支払っているという。

  6月上旬、ドイツ第1テレビの報道番組で介護人の報酬搾取を繰り返すエージェントの弱肉強食ビジネスが暴かれた。

高収入を夢見て在宅ケアを始めたものの・・・

 人材紹介エージェント(以下エージェント)を介して、東欧(特にポーランド、ハンガリー、チェコなど)から派遣された介護人の証言は以下の通りだ。

 アリシアさんはワルシャワにあるエージェントの紹介でドイツ人要介護者の在宅ケアを始めた。月収は手取り1000ユーロ。彼女にとって自国では得ることのできない高額だ。

要介護者は自宅での生活を望んでいる ©Uta Herbert/pixelio.de

 だが、24時間体制での介護を1人で対応するのは、予想を超えた重圧となり、疲労困憊の毎日を過ごしている。エージェントと交わした労働契約書に勤務時間が明記されていなかったことも気になっていた。

 ところが、要介護者の家族は月額2500ユーロをエージェントに支払っているという。介護をする当事者よりもエージェントの取り分(1500ユーロ・約19万5000円)が多いことが分かると、アリシアさんの怒りは爆発した。

 同じくポーランド出身のアギエシカさんは、重度要介護者の在宅ケアに24時間体制で従事。月収は800ユーロ(約10万円)。住み込みで800ユーロの収入なら、仕事のない自国にいるよりもましと思い、昨年訪独した。

 介護をしていくにつれ、精神的にも肉体的にも限界を感じ疲弊したアギエシカさんは、仕事を中断して帰国したいと母国のエージェントへ申し出たところ、拒否された。

 後日、ポーランドにいるアギエシカさんの夫が警察へ届け出ると直訴すると、エージェントはアギエシカさんの帰国を認めたそうだ。