日本よりも欧米で大きな騒ぎになっている米政府による個人情報収集問題――。
政府機関が膨大な個人情報を極秘に収集・分析していた事実が、国家安全保障局(NSA)の契約社員だった男性によって暴露された。電子情報を瞬時に分別する「PRISM」というプログラムを使い、世界中から電子情報が米政府のもとに集められていた。
いまや常態化している米政府による盗聴
グーグルやアップルなどのIT企業9社も諜報活動に加担していたという。内部告発した29歳のエドワード・スノーデン氏は「良心が許さなかった」と話し、政府による市民のプライバシーの侵害は許容できないと訴えた。
ただ筆者には「今さらどうしたのですか」という思いが去来する。と言うのも、6年前までバージニア州に本部を置く米中央情報局(CIA)から車で5分のところに住んでいた者としては、当たり前の事実としか映らないからだ。
例えば2005年12月、ほとんど同じ問題が浮上している。当時、ジョージ・W・ブッシュ大統領がNSAに極秘裏に個人情報の収集を命じていた。はっきり述べると「盗聴」である。
米政府による盗聴行為はその時に始まったわけではない。それ以前から連綿と続けられている行為であり、問題の核心は今も当時も同じである。
ブッシュ氏は当時、米国内に潜伏する国際テロリストの活動と計画を察知するため、令状を取らずにNSAに盗聴を許していた。その行為の論拠になるのは、2001年9月に上下両院で採択された「対テロ戦争で大統領に必要かつ適切な武力行使権を認める」という決議案だった。
テロ攻撃の被害が甚大だったため、議会が大統領に特権的な権限を与えたのだ。国民の大多数もそれを支持した。当時は盗聴であっても許される風潮があった。
その後、多くのメディアが勝手な盗聴は権力の乱用・逸脱であると糾弾した。だが米諜報機関の盗聴は恒常的なもので、今回の問題は氷山の一角に過ぎない。