ドイツニュースダイジェスト 17 Mai 2013 Nr.954

 日本のTPP交渉参加が決定した。TPPとは、環太平洋の国々における経済連携協定のことである。正式名称はTrans-Pacific Partnership。日本の交渉参加には、原加盟国と現在交渉に参加している全11カ国からの承認が必要であったが、4月20日にそのすべての支持が得られたのだ。

 日本がTPPに加盟した場合、どのような問題の発生が予想されるのか。欧州の食肉偽装問題を振り返りながら考えてみよう。

TPPとその問題点

 TPPは、貿易自由化を目指し、域内の関税をほぼゼロにする取り組みである。日本の交渉参加承認の条件として、ニュージーランドやカナダは、米国と同様に自動車の関税撤廃をなるべく後ろ倒しにするよう求めてきた。

 一方、日本にとっての懸案事項は安価な作物が輸入され、日本国内の農業にダメージが出ることだ。また、遺伝子組み換え作物の輸入や食品農薬残留値を米国並みに緩和することにより、食の安全が危険にさらされることも懸念される。

 TPPが話題に上る以前から、日本の食のグローバル化は進んできた。例えば、スーパーマーケットのお惣菜コーナーで販売されている焼き鳥に、タイ製やベトナム製などと書かれていることがある。これは、現地で串に刺すまで加工され、輸入された食品である。

欧州の食肉偽装問題

 TPP加盟後の日本にも起こりうる事態が、欧州で発生した。問題の発覚はアイルランドからであった。2012年末、アイルランドの食品検査局FSAIによって、ハンバーガーに馬肉が含まれていることが発見された。

 アイルランドと英国の2つの食品加工会社が原因とされ、その会社からドイツのスーパーマーケット「アルディ」や「リードル」、英国の「テスコ」に食肉が卸されていたことが判明した。その後、英国の地方自治体FSAの調査により、冷凍食品会社フィンダスの商品から馬肉100%のラザニアが発見された。

 フィンダス社の購入先はフランスのコミジェル社であった。コミジェル社は冷凍加工食品会社で、その冷凍食品が16カ国に卸されていたことから、欧州中に問題が波及した。

 最終的な馬肉の流通経路は下の図(馬肉の流通経路)をご覧いただきたい。よくもこれだけの国々を経由したものだと感心してしまうほどの複雑さである。このような流れの中で、書類上の表記が馬肉から牛肉に書き換わってしまったのだ。

 実際の馬肉は、ルーマニアからフランスのスパンゲロ社へ納入され、ルクセンブルクのタボラ食品工場で加工された。