朝の4時。
ロシア陸軍のある部隊で当直に就いている将校のところに、参謀本部から何の前触れもなく命令書が届く。
開いてみると「ただちに指揮下の部隊を戦闘準備態勢に移行させ、○○時までに××演習場へ緊急展開させよ」との命令が記されている・・・。
新国防相が始めた抜き打ち演習の意図
こんな抜き打ち演習が今年からロシア軍で始まった。
それも半端な規模ではない。
2月に行われた第1回目の抜き打ち演習では、中央軍管区、南部軍管区、空挺軍、空軍軍事輸送航空コマンド、そして核兵器を管理する国防省第12総局の人員7000人、約100両の装備品、航空機48機が動員された。
しかも命令によって指定される演習場は普段の駐屯地から数百キロ離れた馴染みのない場所ばかりであったという。
この演習は海軍や空軍に対しても順次実施されている。
この演習を発案したのは、昨年11月に就任したばかりのセルゲイ・ショイグ国防相であったとされる。
本欄で幾度か触れたように、ロシアでは昨年11月、それまで軍改革を主導していたアナトリー・セルジュコフ国防相が突如として解任され、後任として長らく国家非常事態相であったショイグが任命されている。
そのショイグが独自路線の一環として打ち出してきたのが、この抜き打ち演習だった。
同様の演習はソ連軍においても行われていたが、ソ連崩壊後のロシア軍では大規模なものは行われてこなかった。小規模な抜き打ち演習はあったようだが、「いつやるのか、二等兵でも知っている」と言われるほど形骸化していたともいう。
だが、現代戦は突然始まり、ごく短期間で終結する。