今月7日、ロシアのセルジュコフ国防相がウラジーミル・プーチン大統領によって解任された。(敬称略)

 発端は、先月、ロシア国防省傘下の国営軍事役務企業「ロシア国防サービス(ロスオボロンセルヴィス)」を巡る巨額汚職事件が明らかになったことだった。

 ロスオボロンセルヴィスは2008年に設立された官営軍事企業で、ロシア軍の兵士たちのための給食・洗濯・清掃や整備・燃料供給、果ては軍の機関誌発行や売店の運営、農業生産、ホテル経営まで請け負う。

汚職を減らすための組織で発生した大がかりな汚職

 これによって兵士たちを雑務から解放して戦闘訓練に専念させるほか、各種業務の質の向上や効率化を図ることが設立の目的であった。

 また、整備業務の発注に関する官民の汚職や燃料の横領など、ロシア軍を蝕む深刻な汚職を減らすという役割も期待されており、いわば軍改革の目玉の1つであったと言える。

 ところが、そのロスオボロンセルヴィスが汚職の舞台となっていたというのだ。

 当初の報道によると、国防省の土地を管理している資産管理部という部署がロスオボロンセルヴィスの管理している土地や株式を国有資産を不法に国有資産から登録解除し、そこに国防省の金で保養施設等を建設したうえで市価よりも安く売り払っていたらしい。

 明らかに国防省ぐるみの組織的な汚職だ。

 事態が公になった当初、連邦捜査委員会(SK)が明らかにしたところでは、この事件で国庫が被った損害は30億ルーブル(約75億円)以上ということだったが、その後も余罪が出てきているので、汚職の総額はさらに大きくなりそうだ。

 この事件により、資産管理部の部長らが連邦捜査委員会に身柄を拘束されていたが、ついに国防相本人にまで飛び火したことになる。