いつも不思議に思っていることがある。ドイツで最近、乳糖(Lactose・ラクトース)を除いた乳製品が盛んに売られている。ところが、それが日本にほとんどない。

 日本の友人に「ラクトースフリーの乳製品」の話をしても、「何それ?」みたいな顔をする。そして、たいていは、ファットフリーと勘違いする。

なぜ大人になると牛乳でお腹がゴロゴロするようになるのか

カナダの乳牛、生涯乳量で世界新記録 コップ100万杯分相当

哺乳類の乳には乳糖(ラクトース)が含まれる〔AFPBB News

 乳糖というのは、哺乳類の出すミルクに必ず含まれている糖分だ。牛のミルクにも、もちろん人間の母乳にも含まれている。乳糖は、自然界では乳汁の中以外には存在しない。

 そして、人間の母乳には、他の動物の乳と比べると、乳糖はとりわけ多く含まれているらしい。

 乳糖が小腸の中で分解されるには、ラクターゼ(乳糖のラクトースと紛らわしいので注意!)という酵素が必要だ。ラクターゼは乳糖を分解し、身体のために有用なガラクトースという成分に変える。ガラクトースは、脳髄や細胞壁の構築のために、赤ん坊が緊急に必要とするものであるという。

 ただ、酵素ラクターゼは、子供が成長するにしたがって消えてしまうらしい。離乳期以降は急速に減るので、牛乳や母乳を飲んでも乳糖はうまく分解されなくなる。だから、乳糖は分解されないまま小腸を通り越し、大腸まで行ってしまう。

 大腸にはたくさん細菌がいて、乳酸をガラクトースではなく、違ったガスなどに変えるので、しばしばお腹がゴロゴロ鳴ったり、下痢したりといった問題が起こる。

 つまり、赤ん坊や幼児以外は、牛乳は飲まないほうがよいということになる。赤ん坊を卒業すると酵素ラクターゼが減っていくというのは、人間だけの現象ではなく、すべての動物に共通であるらしい。

 なぜ、ラクターゼが減少するかというと、いろいろな説があるが、おそらく離乳を促すためであると思われる。いつまでも赤ん坊が問題なく母乳を飲み続けると、母体の負担が重くなっていくし、子供の成長も遅れる。

 しかも、母乳を出している間は、母体は排卵が起こらず次の妊娠ができない。だから、母体の体力が回復し、次の妊娠が可能になってきたあたりで、子供が自然に乳離れするようにという天の配剤であると言われている。

 分解できないものを摂取するのは、自然の流れに反するので、だんだん味覚が離れ、乳離れが完遂するようになっているらしい。