文=條伴仁 イラスト=日高トモキチ

 度重なる公開延期を経て、ついに5月27日に『トップガン マーヴェリック』が公開されました。興行的には文句なしの好成績、内容的にも十分に期待に応えてくれる出来といっていいのではないかと思います。 そして、この作品は第1作の監督である故トニー・スコットに捧げられていました。

 今回は『トップガン マーヴェリック』の魅力に触れつつ、その礎を築いたトニー・スコット監督の魅力をトリビュートするプラスワンをお届けします。

 

新旧の魅力を詰め込んだ『トップガン マーヴェリック』

『トップガン マーヴェリック』の冒頭はオリジナル『トップガン』とまったく同じテロップ(“トップガンとは”)、そして同じ曲であるケニー・ロギンスの「デンジャーゾーン」で始まります。しかし、そこに映し出される戦闘機はF14ではなく、進化したF18です。

 この冒頭部分に象徴される過去や伝統へのリスペクトと、新たなアップデートへのアプローチを明確に打ち出したことが、実に36年のブランクを逆に武器に変えることができた『トップガン マーヴェリック』の魅力ではないでしょうか。

 ストーリーも、もはや伝説的な存在となったマーヴェリック(トム・クルーズ)と若いトップパイロットたちの葛藤を軸に、どちらかというとベタな軍隊の伝統への敬意やチームの絆が描かれる一方で、現行のF18だけでなく旧式のF14、そして次世代機の魅力まできっちりと描かれます。

 さらに前作を絶妙に継承したキャスティングと音楽が、シリーズに統一感を与えています。

 監督のジョセフ・コシンスキ―はデビュー作『トロン レガシー』(2010)でいきなり、カルト的な人気を誇る『トロン』(1982)の続編という重責を担った人でもあり、今回の主演トム・クルーズと異色のSF大作『オビリビオン』でコンビを組んでいます。