文=條伴仁 イラスト=日高トモキチ

 本年3月27日に発表された「第94回アカデミー賞」で、濱口竜介監督の日本映画『ドライブ・マイ・カー』が、みごとに「最優秀国際長編映画賞」を受賞しました。日本映画としては2008年(第81回)の『おくりびと』以来の史上2回目の快挙となります。

 今回は、この機会に「アカデミー国際長編映画賞」を国別データで深掘りする、シネマニアックなプラスワンをお送りします。

(なお、本稿は、以下の基準で記述していることにご留意ください。①映画の国籍は記録に残っている「エントリー国」に基づきます。複数国の共同製作の場合、代表して米アカデミー協会にエントリーした国の国籍で扱います。②国名は当時の状況によります(例:ドイツ(現在)と東・西ドイツは別国籍)。③国籍認知もアカデミー協会側の記録によります(例:台湾)。)

 

最強はどこだ? 国別最優勝賞獲得数

 アカデミー国際長編映画賞は1956年に「外国語映画賞」として始まり、本年度(2021年)で66回目となります。名称は2019年から「国際長編映画賞」となり今日まで続いています。第1回目の最優秀作品はフェディリコ・フェリーニ監督の名作『道』でした。過去の記録を見ると、今日までに28か国が最優秀作品賞を受賞しています。

『道』(1954)写真=アフロ 

 では、その中で受賞回数が最も多いのはどこか?単純な興味で調べてみました。

 結果、第1位イタリアの11回、第2位フランスの9回と、ノミネート常連ともいえる2国が断トツとなりました。ちなみに第3位はスペインとデンマークの各4回となります。

 受賞作の主なものでは、イタリアは『道』『8 1/2』『ニュー・シネマ・パラダイス』など、映画ファン必見の名作が並ぶ中で、フェディリコ・フェリーニは『道』(1956)、『カビリアの夜』(1957)、『8 1/2』(1963)、『フェリーニのアマルコルド』(1974)と4回の受賞歴があり、まさに最強監督の一人といえるでしょう。

 フランスの受賞作はジャック・タチの名作『ぼくの叔父さん』(1958)を皮切りに、クロード・ルルーシュ『男と女』(1966)、ルイス・ブニュエル『ブルジョアジーの密かな愉しみ』(1972)、フランソワ・トリフォー『映画に愛をこめて アメリカの夜』(1973)など、こちらも名作が並びますが、複数回受賞した監督は今のところいません。