文=條伴仁 イラスト=日高トモキチ

幅広いエンターテイナーとしての再評価

 ジャン=ポール・ベルモンドが亡くなったのは、2021年9月5日のことでした。

 日本で昨年から2回の特集上映「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選(1と2)」で、幅広いエンターテイナーとしての再評価が高まりつつあったところでした。

 今回のシネマ・プラス・ワンは、この「ジャン=ポール・ベルモンド(J=PB)傑作選」に最大限の敬意を払いつつ、そこで取り上げられなかったベルモンド、ある意味、従来のベルモンドの作品群をあらためて紹介することで、「J=PL傑作選」と併せて、この大スターの全体像をつかんでいただく「プラス・ワン」の試みができればと思います。

 

【初級】観ておきたい代表作

※映画マニアの方は読まなく大丈夫なセクションです。

 まずはベルモンドの名前を一躍世界に知らしめた代表作『勝手にしやがれ』(1960)と『気狂いピエロ』(1965)から。ともにジャン=リュック・ゴダール監督によるヌーベルバーグの代表作として、映画史的にも名高い名作ですので、未見の方はこの機会に必見の作品です。

『勝手にしやがれ』(1960) 写真=Collection Christophel/アフロ

 どちらも無軌道で破滅的な若者をベルモンドが活き活きと演じていますが、関係各方面から怒られるのを覚悟であえて書くならば、入門的且つ究極の見どころはその「カッコよさ」ではないかと思います。もし作品を観て「よく判らない」でも、「カッコよさ」だけ残っていれば十分な収穫となるはずです。ベルモンド史的には、尖った、そして意志ある俳優としての姿を見られる作品です。

『気狂いピエロ』(1965) 写真=Collection Christophel/アフロ

 次にご紹介するのは、華々しい大スターとしてのベルモンド作品『ボルサリーノ』(1970)です。現在のようにCGによる見せ場が中心となる以前の映画界では「スター」の存在が、非常に重要な見どころでした。その中でも時代を代表する人気スターの対等主演格での共演は一大イベントとして数々の大ヒット作が生まれていますが、これはベルモンドの「夢の競演」ものの代表作となった1本です。