相手はアラン・ドロン。端正な美貌でどちらかというとクールなキャラクターとして人気のあったドロンは、ベルモンドと対極の個性で人気を二分したスターです。
内容は暗黒街で成り上がる二人のギャングの友情と裏切りを描くギャング映画で、タイトルの「ボルサリーノ」はイタリア製の高級帽子のこと。暗黒街でこのボルサリーノを被ることが成功の証として描かれます。もしかしたら当時の期待値が大きすぎたのかもしれませんが、公開時は今一つという評価もあったようですが、ストレートに楽しめる娯楽映画としてお勧めです。こちらもキーワードは「カッコよさ」。
【上級】押さえておきたい3つのジャンル
その1:フィルム・ノワール
「J=PB傑作選」は、アクション、サスペンス、冒険活劇、コメディなど、ベルモンドの多彩な娯楽作品を映画館で観られる至福のセレクションだったのですが、それらの作品群を「陽」とすると、どちらかというと「陰」の魅力を放つフランス製犯罪映画、いわゆる「フレンチ・ノワール」でも、ベルモンドは多くの名作を残してします。一部「J=PB傑作選」の作品とも重複しますが、代表作を一気にご紹介しましょう。
まずはフィルム・ノワールの巨匠として知られるだけでなく、今年リバイバル公開された『恐るべき子供たち』(1950)などその独特の映画製作スタイルで高い評価を得ているジャン=ピエール・メルヴィル監督の初期の傑作『いぬ』(1963)。警察の密告者(警察のいぬ)をテーマにしたこの作品では、若き日のベルモンドのトレンチコードの着こなしが鮮烈な印象を残してくれます。
そのフィルム・ノワールの世界で、自らの数奇な体験を基にした原作者・脚本家・監督として孤高の地位を築いたのがジョゼ・ジョヴァンニでした。今回あらためてベルモンドのフィルモグラフィーを見渡してみるとジョヴァンニと関わりのある作品が多きことに気づきました。ジョヴァンニが原作そして脚本に参加した『墓場なき野郎ども』(1960)と『勝負(かた)をつけろ』(1961)は、どちらもこのジャンルの典型のようなギャングものです。
また「J=PB傑作選」でも上映されたジョヴァンニ原作の『オー!』(1968)は、見直してみると暗黒街の中で頭角をあらわし、やがて破滅していく主人公の「陰」と「陽」のバランスが絶妙なことに気づかされました。
そして実は最もお勧めしたいのがジョヴァンニが原作・脚本・監督を務めた『ラ・スクムーン』(1972)です。ジョヴァンニが自らの獄中生活で知り合った男からヒントを得て小説を書いたといわる本作は、第二次世界大戦の前後のマルセイユで「死神」と呼ばれたギャングの裏切りと復讐を、戦争という時代背景を絡めて描くことで、他のどの作品にもない深みのあるドラマにすることに成功しています。オルゴールから流れる物悲しい音楽も印象的な、感動必至の名作ですので、もし観られる機会があればお勧めです。