その2:戦争映画

 ベルモンドのフィルムグラフィーを見ると戦争映画は決して多くないものの、このジャンルの中でも重要な2つの作品に出演していることに気づきます。1つは『ダンケルク』(1964)、そしてもう1つが『パリは燃えているか』(1966)です。

『ダンケルク』は近年ではクリストファー・ノーラン監督の2017年の作品が記憶に新しい題材ですが、ベルモンドが主演した1964年の『ダンケルク』は『地下室のメロディ』(1963)などで知られるアンリ・ヴェルヌイユ監督が撤退を待ちながら次第に追い詰められていく人々の焦燥感を描いた異色の反戦映画の名作です。後にベルモンドは『恐怖に襲われた街』(1975)や『追悼のメロディ』(1976)でもヴェルヌイユ監督とコラボしています。

『ダンケルク』(1964) 写真=Everett Collection/アフロ

『パリは燃えているか』は、『史上最大の作戦』(1962)の成功を受けて訪れた戦争大作ブームの中で、第二次世界大戦でのドイツ軍占領下のパリ解放を描くオールスター大作映画で、ベルモンドはレジスタンスの若者を好演しています。ちなみに脚本にはフランシス・フォード・コッポラが参加していました。

『パリは燃えているか』(1966) 写真=mptvimages/アフ

その3:セザール賞受賞作

 最後に紹介したいのは『ライオンと呼ばれた男』(1988)です。それまで人気と実力を兼ね備えながら「賞」には縁のなかったベルモンドが、フランス映画の最高賞であるセザール賞で、ついに主演男優賞を獲得した作品です。監督は『男と女』『愛と悲しみのボレロ』などで知られるクロード・ルルーシュ、そしてルルーシュと名コンビのフランシス・レイが音楽を担当してします。ベルモンドは社会的に成功してものなお、純粋に冒険を求める実業家という、本人のキャラクターを彷彿させる役柄を演じており、後期のベルモンドの中でも、ぜひ押さえてきたい作品となっています。

 

【変化球】そして日本では・・・

 冒頭でご紹介したように『勝手にしやがれ』『気狂いピエロ』で常識にとらわれない、奔放なアウトローを演じて、その「カッコよさ」で世界的な人気者となったベルモンドですが、それに大きな影響を受けた日本映画があることをご存知でしょうか? それが1967年の日活作品『紅の流れ星』です。

 主演・渡哲也、監督・舛田利雄のいわゆる「日活アクション」の1本ですが、この作品は当時の最先端であったベルモンドの『勝手しやがれ』やヌーベルバーグ的な映画手法を、自由な発想で取り込むことで、今でも新鮮な異色作となっており、特にラストシーンは忘れがたいインパクトを残します。まだ映画創りが自由だった時代の幸せを実感できる逸品として、お勧めのプラス・ワンです。