これも「アベノミクス効果」なのか。韓国の政府、産業界で「2013年の経済成長率で日本に抜かれる可能性がある」ことが大きな話題になっている。政府は景気対策を急ぐが、産業界では「ウォン高・円安の影響が出るのはこれから」と戦々恐々だ。

 2013年5月18日、韓国の高度経済成長の立役者の1人だった南悳祐(ナム・ドクウ)元首相が89歳で死去した。南氏は、経済学者出身。朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領が1969年秋に財務部長官に起用した。

 5年間務めた後、1974年秋に副首相兼経済企画院長官に就任し、さらに朴正煕元大統領が暗殺されるまで大統領経済特別補佐官を歴任した。

「漢江の奇跡」の立役者の死と1~3月期GDP統計の衝撃

 「漢江の奇跡」と呼ばれる韓国の超高度経済成長政策の企画立案、実行の実務責任者だった。ソウル~釜山(プサン)間の高速道路建設など社会インフラの整備や重化学工業育成政策、さらに中東への韓国企業の進出などを実行した人物だ。

 全斗煥(チョン・ドファン)政権でも首相を務め、政権発足後の国内の混乱や石油ショックの影響を乗り越え、韓国を先進国に導いた立役者である。

 南氏こそ、「ドクター(米オクラホマ州立大経済学博士)高度成長」だった。

朴槿恵氏が韓国大統領選に出馬表明

亡くなった南悳祐(ナム・ドクウ)元首相のことは、朴槿恵(パク・クネ)大統領=写真=も「元老役」として重用していた〔AFPBB News

 もちろん、朴正煕元大統領の長女である朴槿恵(パク・クネ)大統領を強く支持してきた。2月の大統領就任式で「漢江の奇跡を再び」と繰り返し強調した朴槿恵大統領も、父親の時代からよく知っている南氏を政策ブレーンの中でも「元老役」として重用した。

 そんな南氏だけに、生前最後の心配事も「韓国経済」だったに違いない。

 5月20日付の「毎日経済新聞」の社説は、1本目が「『漢江の奇跡』南悳祐元総理を称える」だ。生前の功績を整理した内容だが、そのすぐ下の2本目の社説は「韓日経済成長率逆転の危機」というタイトルだった。