サッカーのワールドカップ(W杯)は世界最大のスポーツイベントとされ、巨額の放映権料とスポンサー料が動くことでも知られている。国民的大スター朴智星の活躍で熱狂に包まれる韓国では、「W杯テレビ中継」を巡り、北朝鮮も巻き込んだ騒動も繰り広げられた。

放映権料を払えない北朝鮮でW杯が放映される不思議

韓国 ギリシャを下し白星発進、W杯

1次リーグ韓国対ギリシャ。写真は前半7分に先制点を決める韓国の李正秀。6月12日〔AFPBB News

 放映権料を支払えるはずもない北朝鮮でも、きちんとW杯大会は放送されているのだ。

 「あれれ、W杯放送が始まったぞ!」

 韓国で北朝鮮の朝鮮中央テレビを傍受している北朝鮮ウォッチャーは、6月12日土曜日夜9時過ぎ、突然始まった放送に驚いた。

 ちょうど韓国とギリシャの試合が始まった直後だったが、北朝鮮で放送されたのは、前日の開会式後の「南アフリカ対メキシコ」戦の録画中継だった。よく見ると画面の下の方が消され、全体的に横長だが、はっきりとした画面だ。

 翌13日の日曜日も午後に、「ウルグアイ対フランス」戦、夜に「アルゼンチン対ナイジェリア」戦が録画放送された。

2002年と同じように海賊版なのか?

ブラジル白星発進、北朝鮮に辛勝 W杯

1次リーグ北朝鮮対ブラジル。北朝鮮のホン・ヨンジョとボールを競り合うブラジルのフェリペ・メロ〔AFPBB News

 「どうして北朝鮮でも放送があるの?」「海賊放送ではないか?」――韓国では、北朝鮮でのW杯中継の話が伝わると、こんな疑問の声が上がった。

 というのも、3月26日に韓国の哨戒艦が北朝鮮の魚雷によると見られる攻撃を受けて沈没したのを機に、韓国では「W杯の北朝鮮での中継放送は不可能になった」との見方が浮上していたからだ。哨戒艦沈没と北朝鮮でのW杯のテレビ放送――2つの話は、どう結びつくのか?

 北朝鮮はかつて「アジアのサッカー強国」と言われ、1966年のW杯イングランド大会ではベスト8に進出した。その後、韓国にW杯出場国の座を奪われていたが、今回、44年ぶりに予選を突破しW杯出場を決めた。

 絶好の国威発揚の機会のはずだが、ここで問題が生じた。巨額の資金が必要とされるテレビ放映権をどう獲得するかだ。