マット安川 この新政権、しばらく見守るしかないのでしょうか――今回のゲストである小林節さんに、新総理が旧左翼の市民グループの出身であることを聞くと、何度もお会いした印象から、「周りに学びつつ成長できる人物」と返ってきた。特定のイデオロギーを前提に思考停止する人物ではない、と。
大学教授であり、弁護士であり、人を見る仕事をされている小林さん。その「菅評」は傾聴に値します。
“小鳩”退場と菅政権の成立で真の政権交代が実現
憲法学者、慶應義塾大学教授、弁護士。日本海新聞・大阪日日新聞客員論説委員。『憲法守って国滅ぶ』『そろそろ憲法を変えてみようか』(共著)など著書多数。(撮影・前田せいめい、AFPの写真以外以下同)
小林 菅政権の成立は実質的な政権交代、本当の政治改革の始まりを意味すると思います。思えば鳩山(由起夫)さんも小沢(一郎)さんも、金権体質、権力体質、おぼっちゃん体質に染まった、古い自民党そのもののような政治家です。
自民党と一緒に一度去らないといけない人たちが去って、ようやくこれからだという気がしています。
菅(直人)さんは元左翼という目で見られがちですが、実際は柔軟性のある調整型の政治家です。そうでなくては総理になれるわけがありません。
確かに靖国問題、あるいは君が代、日の丸へのスタンスは気になりますが、彼が受けた教育を思えば仕方のないことだと、同世代の立場から思います。天皇を“天ちゃん”と呼び、君が代とは天皇の世の中のことであって今は国民の世の中だと、教えられた世代ですから。
調べたところによると、君が代の本当の主題は男女の愛で、互いに長生きしてほしいという願いを込めた歌です。そういうことを知れば抵抗感も失せるでしょうし、そうでなくとも人は年とともに変わります。
トップが菅さんであれば、あからさまな左翼政権になるようなことはないはずです。
彼だけでなく、官房長官の仙石(由人)さん、幹事長の枝野(幸男)さんも個人的によく知っていますが、みな「本物」です。学識も経験も備え、決して不正を働かない誠実さもある。長い間“小沢的なるもの”と戦ってきた実績も評価できます。