2月8日で48歳になった。私は1965年、昭和40年の生まれで、干支は巳である。4度目の年男ということで、なかなか感慨深い。

 36歳での年男の時に、私は10年間勤めた会社を辞めて作家専業になった。前年の9月初めに新潮新人賞を受賞して、小説家としてデビューしたものの、創作だけで食べていけるかどうかは分からない。担当の編集者からも、「今はとにかく本が売れませんから」と、それとなく忠告された。3~4カ月ほど悩みに悩み、私は小説一本でやってみようと決意した。年明けに上司に打ち明けて、退職したのは2月10日だった。将来への不安と、受賞後第1作の執筆に追われていたのとで、自分が年男だとはまるで気づかなかった。

 24歳での年男の時も似たようなものだった。その年の3月に私は妻と結婚した。私は北大を卒業するところで、つまり大学卒業と就職と結婚の3つを同時に果たそうとしていたのだから、自分が年男であることなどまったく頭に浮かばなかった。

 そんなわけで、去年の暮れに、デパートの文房具店で干支の置物を選んでいた時に、私はふと12年前と24年前の自分を思い返し、どちらの年も人生の大きな転機に当たっていたことを発見して、大いに驚いたのである。

 巳は脱皮=飛躍の年だという。巳年生まれの私が巳年ごとに脱皮をしてきたと言うと出来すぎだが、事実は事実である。それなら、4度目の年男を迎えて、私はどのような脱皮を遂げるのだろうか。来年のことを言うと鬼が笑うというが、今年がどのような年になったのかは、年末にご報告したいと思う。

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 2月の末に、深夜パソコンに向かっていた時、口の中に異物があるのに気づいた。指で摘んでみると歯の欠片だった。舌で探ったところ、左下の一番奥の歯が大きく抉れていた。知らぬ間に虫歯が進行していて、脆くなった歯が欠けたらしい。

 翌朝、かかりつけの歯科医院に電話をした。診察は一番早くて週明けの火曜日だというので、私は痛みが酷くならないことを祈りながら3日間を過ごした。