「楽しくて、充実したいい一日だったなあ。新しい友達もできたし」

 2012年11月4日の日曜日の夜、フィラデルフィアからニューヨークに向かうバスの中で私はそう一日を振り返っていました。

 明日の朝から仕事が待っていましたが、そんなことも気にならずその日時間を共にした人たちと自分の社会に対する想い、自分や友人が直面している問題を車中で熱く語っていました。

 11月4日、私が何をしていたかというと2日後に迫る大統領選に向けた選挙キャンペーンのボランティアでした。

 米大統領選は国民全員の単純過半数ではなく、州ごとに勝敗が決まり、その積み重ねで当選が決まるため、浮動票が多い州で支持を獲得することが当選への鍵となります。私が行ったフィラデルフィアがあるペンシルべニア州も、スウィング・ステイツと呼ばれる浮動票の多い州の一つです。

市民の力をフル活用する参加型選挙キャンペーン

個人宅訪問ボランティアの面々:左からサルーア、私、ミーガン、デニス(著者撮影)

 ボランティアは朝集合し、バスでフィラデルフィアに移動。現地のチームリーダーから個人宅への訪問方法の指導後、訪問する個人宅リストをもらい、2人1組で訪問していきます。

 私のパートナーはその日初めて会った若い女性弁護士のサルーア。また隣のエリアを担当したミーガンとデニスは、それぞれ中学校と高校の教師でした。

 訪問して話す内容は「誰を支持することに決めたか、投票方法や投票所までの行き方はわかっているか、何時頃投票にいく予定か」等、確実に投票してもらうための最後の確認という感じです。

 いきなり訪問して邪険に扱われるのかと思ったら、ほとんどの人が快く応対してくれ、中には投票所が分からない人もいたので行き方を確認することもできました。ボランティアを見かけると「あなたがやっているのは重要なことだからがんばって!」と応援してくれる人もいました。

 この活動を通じて多くを学びましたが、とても驚いたことが2点あります。一つはインターネットを通じ、いとも簡単に戸別訪問や電話でのお願いなどのボランティアができる機会がわかり、自分のスケジュールに合わせて参加できることです。

 自分の住所をキャンペーンサイトに登録すると、自宅周辺でのボランティアの募集リストが閲覧でき、すぐに応募できます。仕事の関係で夜しか自由時間がなければ、電話でのお願い、一日時間が使えそうなら浮動票の多いエリアまで出向いて個人宅訪問という具合です。

 もう一つは現場でキャンペーンに関わっている主要な人たちは有給スタッフだけでなく、ボランティアが非常に多いこと、しかもボランティアにも現場が任せられていることでした。私のエリアでは近隣に住む女性、ジョシーがリーダーとして現場を取り仕切っていました。