あなたの娘がニューヨークに住んでいるとしよう。彼の地でよき米国人の伴侶に恵まれ、めでたく結婚の運びとなった。○月○日は結婚式。米国のウエディングパーティーだから、やはりきれいな色の和服だろうと、奥さんは新しい訪問着を新調。相手のご両親へのプレゼントも揃えた。
一生に一度のことだから、1週間の休暇を取る。30年もサラリーマンをしていて、こんなにまとめて有休を取るのは初めてだ。それにしても、あの幼かった娘がお嫁に行くのかと思うと、図らずも胸にこみ上げるものがある。
そして、出発前のせわしない日々も過ぎ、ようやく当日、感謝と晴れがましさの入り混じった心持で空港へ行ったら、予告なしのストライキ。まさか・・・!
まさにこういう事態が、ドイツでは去年から今年にかけて何度も起こった。
巨大空港を麻痺させ、乗客に苦痛を強いるストライキが頻発
去年の2月は、フランクフルトの管制塔の職員がストをした。空港の安全業務(荷物検査や飛行機の誘導など)の組合のストを支援するための連帯行動ということだったが、他の職種は代替要員で切り抜けられても、管制塔は専門職なのでそうはいかない。
つまり、1日平均の利用客が15万人、貨物の扱いが6万トンという、ヨーロッパ最大級のハブ空港が、一時、全く機能しなくなったわけだ。その混乱たるや想像を絶する。
しかし、最もひどかったのは、ルフトハンザの客室乗務員組合のストだった。8月の終わりから断続的に始まったストは、休暇の時期だけに、十分乗客に迷惑をかけていたが、まだ足りないとばかりに、9月7日に全面ストに突入した。
組合に所属しているフライトアテンダントが、ドイツの6つの主要空港で24時間、職場を放棄したのである。
この1日だけでも、欠航した飛行機が1200便。多くの外国からの乗り継ぎ客が各空港で漂流してしまい、空港周辺のホテルは満杯。空港ホールには見渡す限り仮設ベッドが並んで、野戦病院のようになった。
国籍によっては、ドイツのビザなしには空港から一歩も出ることのできない人たちもいる。航空ダイヤは複雑に絡み合っているので、ストが解除された後も数日にわたり、ルフトハンザは世界の空を混乱させた。