東日本大震災後、住まいの安全性に対する国民の関心は確実に高まった。被災して住まいを失った人は直後からその確保に苦労を強いられ、原発事故も重なって、現在も再建の目処が立たない人も多い。

 被災を免れた人も、少なからず住まいの安全性に思いを巡らしたのではないか。自分の住まいは安全なのか、あの時以上に激しい揺れに耐えることができるのか、耐えることができたとしてもライフラインが止まった時はどうしたらいいのか、そもそも地盤は大丈夫か、活断層があったりしないのか、など。

 防災そのものに対する関心以前に、生活の基盤であり、家族を守るシェルターであるはずの住まいの安全性に、まずは意識が向くのが自然であろう。

 筆者の自宅は都内の築30年以上経つ戸建住宅である。簡易な耐震診断は行っており、その結果から倒壊の心配はないと考えていたが、あの日、家族と連絡が取れない間、やはり不安であった。

 中古物件を選んだのは失敗だったと後悔することにならなければいいのだが、などという考えが頭をよぎったりしたのである。幸い何ともなかった。我が家だけでなくご近所の皆が無事だった。

 あれから2年近く経過し、住まいの安全性に対する関心が高まった今、どのような住まいであれば家族を守ることができるのか、あるいはどのような住まい方をすれば災害を可能な限り免れることができるのか、そうした視点から改めて住宅に焦点を当てていきたいと思う。

震災後、地域の絆の大切さを認識した人が増えた


図表1:東日本大震災後の考え方の変化(資料)国土交通省「国民意識調査」国土交通白書2012。平成24年1~2月に、全国の満20歳以上の男女が対象拡大画像表示

 筆者が最初に着目したのは住宅そのものではなく、コミュニティーである。

 東日本大震災後、絆という言葉を何度も目にしたが、家族との絆の大切さを、身をもって感じた体験から自然に使われるようになったものと思われる。地域の絆、被災地と支援するボランティアとの絆といった使われ方もあったと思う。

 国土交通省が行った国民意識調査によると、東日本大震災後の考え方の変化を問う設問に、回答者の約4割が「家族の絆の大切さ」を挙げ、「地域の絆の大切さ」も約15%が挙げている。

 絆とは、人と人との断つことのできないつながり、離れがたい結びつきのことである。

 震災を通じて、家族とのつながりばかりでなく、近隣住民同士のつながりの重要性を認識した人が増えたことを示している。