子どもの世界にも領土問題が存在する。上海には韓国人も多く、その子女らがインターナショナルスクールに通っているのだが、ここで日本人児童が韓国人児童にやり込められるケースがままある。竹島問題がそれだ。これはここ数カ月に始まった現象ではない。過去10年、上海に在住する日韓の子どもの間で日常的に生じる摩擦でもあった。

 「トクト(竹島の韓国名) イズ アワ ランド!」――。

 感情剥き出しに迫ってくる韓国人児童を相手に、日本人児童は無言で立ち尽くすしかない。

 過去、上海で日本人の母親たちが集まって「想定問答」を議論したことがある。「韓国人や中国人から歴史問題について詰め寄られたら、どう切り返せばいいのか」に誰もが悩んでいたのだ。しかし、母親の世代には、近隣諸国の国民に対して日本現代史を説明できるほどの学習経験はない。結局名案は浮かばなかった。

 中国でビジネスに従事する日本人駐在員にとっても同じ事態が起きている。中国人から「あなたはこの問題について、どういう認識なんですか?」と尋ねられるのだ。

 職場の従業員、取引先企業の幹部、日式クラブの馴染みのチーママ・・・、彼ら彼女らに突っ込まれた日本人駐在員は誰もがタジタジになる。ある意味、「踏み絵」的にこの質問が利用されているフシもある。「お前はどっちの味方か」と、民間の経済活動にも政治・外交問題を持ち込み、相手を屈服させようという下心を覗かせる中国人もいる。

 反論できないのは、若い世代も同じことだ。都内の公立校に通う中学3年生は、「学校でも塾でも、竹島は韓国との間に領土問題がある、とだけしか教えてくれない」と話す。日本の教育現場が変わらない限り、「無知な日本人の恥」を晒し続けることになるのだ。

武蔵村山市教育委員会が補助教材を作成した理由

 そんな中、筆者は、日本の小中学校で使われている尖閣諸島についての学習資料を手に入れた。A4判4ページから成り、尖閣諸島の写真や地図、年表を入れた補助教材は、武蔵村山市教育委員会が作成し、2012年末に市内の小中学校に向けて配布を行ったものだ。

 資料作成に至った経緯について、同委員会は次のように述べている。