しかし、そのように“完璧”に近い受動的ミサイル防衛態勢を構築するには、まず大前提としてアメリカミサイル防衛局と日本をはじめとする同盟国が協力して開発推進中のイージスBMDの迎撃精度が100%に限りなく近づかなければならない。

 そして、イージスBMD搭載艦、駆逐艦、潜水艦、艦載ヘリコプター、PAC-3、早期警戒管制機、早期警戒機、戦闘機、空中給油機、などを現有量の2~3倍増する必要がある。さらに理想的には、新規装備として無人偵察機、偵察衛星、攻撃原子力潜水艦も必要である。

 もちろんそれら増強システムの運用要員も同様に必要なのは当然であるため、海上自衛隊も航空自衛隊も現在の3倍の規模に膨張しなければならない。

 長射程ミサイル防衛に直接関与しないように見える陸上自衛隊とても、PAC-3をはじめ飛躍的に増大するミサイル防衛装備や対空ミサイル貯蔵施設ならびに関連基地・施設の警戒警備に人員を割かねばならなくなり、現在の風潮のように「海・空を増やす代わりに陸を減らす」とは反対に、最悪でも現状維持は絶対に必要になる。

 要するに、受動的な抑止力を建設するには、兵力50万、各種水上戦闘艦100隻、攻撃潜水艦40隻、各種戦闘機600機、各種警戒機50機、PAC-3対空ミサイルシステム600セットを擁する自衛隊が必要になる。この規模の軍隊は、アメリカ軍にははるかに
及ばないとはいっても、国際軍事水準から見ると質・量ともに極めて強大な軍事システムを構築し維持しなければならないことになる。

 このような防衛能力強化は、現在日本が直面している軍事的脅威に即刻備えるための抑止能力構築である以上、可及的速やかな完成が必要である。したがって、おそらく今後5年間近くにわたっての国防費は現行の5倍以上は必要になる。単純に考えても、これらの高価な装備の大量調達や人員大増員に伴う人件費や諸経費の増大に対処することは、GDPの僅か1%を自分たち自身の国土と国民を防衛するための国防費に支出することにすら躊躇している現状では、とても無理な相談ということになる。

 このように、現行の受動的ミサイル防衛態勢を強化して対日長射程ミサイル攻撃を抑え込んでしまおうという戦略は絶望的なアイデアと言えよう。

強力な報復攻撃力で対日攻撃意思を封じ込める

 それならば、いかにすべきなのか?