先週ようやく中国共産党第18期中央委員205人全員の略歴に目を通し終え、主要事項につきデータベース化を完了した。「共産党内派閥の研究」第4回となる今回からは、何回かに分け、この集計結果に基づく分析をご紹介していきたい。(文中敬称略)

分析の手法

国家主義への依存強める中国共産党

中国革命発祥の地、江西省・井岡山にある党幹部養成施設で行われた式典で、革命を再現した演技〔AFPBB News

 各中央委員の略歴は基本的に新華社資料を使った。ただし、公式資料が入手できない一部の中央委員については、互動百科などの情報を参考とした。

 それにしても最近はこの手のサイトが充実している。やはり中国人にとって人事情報はかくも貴重なのだ、と妙に納得させられた。

 今回筆者が作ったデータベースは、生まれた年月、学歴、就職後20~30代を過ごした地方または単位(職場)、その後の経歴、現職、特定の姻戚関係や人脈などを書き込んだ。そのうえで、様々な角度から分析を行うのだが、今回この「角度」をどうするかが最も悩ましかった。

 当然、中国で公開される人事情報には、日本の「国会便覧」のごとく各政治家の所属派閥などの詳細が明記されることはない。それどころか、中国国内なら周知の人脈や姻戚・人間関係すらも、一部の例外を除き、ほとんど掲載されない。これが中国公開情報の限界である。

 だから、これから申し上げることは公開資料に基づく情報(information)であって、決して諜報(intelligence)にまで昇華したものではない。他方、中国内政を「北京の政治雀」たちの噂話だけで分析することがいかに危険かは、昨今の様々な推測報道が示す通りであろう。

 本稿では、インテリジェンスの王道に従い、まずは入手可能な公開情報を丹念に集め、それを様々な角度からクロスチェックする。そのうえで、考えられる可能性の中からいくつかの仮説を抽出し、最終的にその真偽を(噂話を含む)非公開情報で検証するという手法を採る。

基本データ

 まずは、ごく基本的なことから始めよう。今回の集計で明らかになったポイントをざっと列挙する。カッコ内は筆者のとりあえずのコメントだ。

 ちなみに、これらは筆者が時間をかけて必死で集計した結果なのだが、何と新華社は11月22日付でその詳細をしれっと報じていた。おいおい、報道するなら、もっと詳しい情報を出してくれよ、と思わず突っ込みたくなる。