カンボジアは例年、12月初旬あたりから本格的な乾期に突入する。
特に11月下旬から1月下旬までの乾期前半は涼期とも言われ、1年で最も過ごしやすい季節となる。日差しの強さは相変わらずだが、日陰に入れば日中でも比較的涼しく、雨も降らないので、アンコールワットなど観光地にとっては稼ぎ時のハイシーズンだ。
世界の注目を集めたカンボジア、日本企業進出も加速の一途
首都プノンペンもずいぶん涼しくなってきたが、今から遡ること約1カ月半前の11月15~20日の5日間、プノンペンは世界各国の首脳クラスが集うイベントの熱気に包まれていた。
東南アジア諸国連合(ASEAN)本会議(11月15日~)と関連各国の首脳会合(同18日~)が、現在ASEANの議長国であるカンボジアの首都プノンペンにて開催。ASEAN10カ国に加え、日本、米国、中国、韓国、ロシアなど8カ国からなる計18カ国の首脳クラスが集結することとなった。
ようやく復興の緒に就いたばかりの小国カンボジアにとっては、まさに“大人の仲間入り”の一里塚ともなり得る世紀の一大イベントである。本会議開催の数カ月前から、プノンペン市内は“化粧直し”の突貫工事が真っ盛りであった。
ただでさえ市内を走る車やバイクの数が爆発的に増加し、交通渋滞が慢性化しつつある状況の中で、市のシンボルである独立記念塔の改装工事をはじめ各主要道路の舗装工事などが重なり、車やバイクでの移動が一般的なプノンペン市民にとっては極めてストレスの大きな期間ともなった。
本会議・首脳会合の開催期間には、市内の主な道路の多くが封鎖され、市内の通常の移動すら極めて困難な状況になった。余談ながら筆者も、事業の一環でプノンペン近郊の精米工場に輸出用のコメの籾(もみ)を搬送するタイミングがこの道路事情にぶつかり、少々肝を冷やす事態ともなった。
さらに、11月の大統領選で再選を果たしたバラク・オバマ米大統領にとっての最初の外遊先となったことが(タイ・ミャンマー・カンボジア歴訪)、大統領1期目に打ち出した「アジア最優先」戦略が2期目も外交の軸として引き継がれることの証しと評され、さらなる注目を浴びるようになったASEAN諸国。
いいタイミングでASEAN議長国の座にあったカンボジアが、そのメーンイベントの開催地と選ばれたのは、多くの報道機関による露出によってその復興の状況を世界に広められたという意味では幸いであった。
とはいえ、実際海外企業のカンボジア進出は、それを待つことなく加速の一途を続けている。
日系企業だけを見ても、2012年上半期において商業省(Ministry of Commerce, MOC)に会社登記済み・登記申請中の企業は70社を超え、2012年通年では100社を超えることが確実視されている。