週刊NY生活 2012年12月8日423号
ニューヨーク市警の警察官が裸足のホームレスにブーツを買い与えた時の様子がインターネットにアップされ、「素晴らしい行為」などと大反響を巻き起こしたが、当のホームレスはブーツを履かず、「欲しいのは分け前」と答えていることが分かった。
警察官のラリー・ディプリモさん(25歳)は、寒風の吹く11月14日、タイムズスクエア付近で裸足で座り込んでいるホームレスのジェフリー・ヒルマンさん(54歳)を見かねて、近くのシューズショップ「スケッチャーズ」でブーツと靴下を75ドルで購入、しゃがんでヒルマンさんにブーツを履かせた。
たまたま居合わせたアリゾナからの旅行者ジェニファー・フォスターさんが2人の様子を撮影。その様子にいたく感銘したフォスターさんは11月27日に写真を市警のフェイスブックに送った。
するとわずか数日間で「いいね!」は約57万人、「シェア」は21万件にまで及ぶ大反響を巻き起こした。世界中から寄せられた3万件におよぶコメントのほとんどはディプリモさんを褒め称える内容だった。
一躍時の人となったディプリモさんは新聞の表紙を飾り、テレビのトークショーなどでも大きく取り上げられた。
しかし、ニューヨークタイムズ紙によれば、数日後、ヒルマンさんはまた裸足だった。同紙のインタビューにヒルマンさんは「あの靴は隠している。あれは大金の価値がある」と述べ、ヒルマンさんに感謝しつつも、「いろんなところに自分の許可なく取り上げられているが私には何が手に入る? 欲しいのは分け前さ」と答えている。
ヒルマンさんは78年から5年間、米軍の食料係として働き、ホームレスになる前はレストランで働いていたという。2人の成人した娘がいるがこの3年ほどはほとんど連絡を取っていないという。
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