北米報知 2012年11月15日47号
国際化の時代へ歩みを進める日本。政府統計からも多文化社会の広がりを見せる日本だが、日本人と他人種のルーツを持つ人々は、依然として社会的な問題に直面しているとの声が挙がっている。
非営利団体「ミックスルーツ・ジャパン(MRJ)」のエドワード須本代表は2006年、多文化ルーツのユニークな経験を書き込むことのできるオンライン掲示板を設立した。
自分たちが知る唯一の国において、個人的かつ感情的になった体験や経験を書き込み共有する。「ミクシー」と呼ばれる日本語ソーシャルメディアで話題を呼び、大きな注目を集めた。
「団体において使用する用語では多くの議論がありましたが、『ミックスルーツ』という言葉を選びました。『ハーフ』、『ダブル』という言葉は、我々のアイデンティティーには当てはまりません」
東京で行われる婚姻では、10組のうち1組は国際結婚とされる。大阪では14組に1組となる。日本国民でない人々やその子供、未婚のカップルの子供たちが加わり、多文化社会を構成する。
須本さん自身もベネズエラと日本のルーツを持つ。ベネズエラで生まれ、日本で育ち、米国大学を卒業した。母国語は日本語と考えているが、英語も流ちょうだ。自分の「遺産」であるスペイン語も勉強している。
多文化社会への理解、話し合いの場を
MRJは社会を取り巻く動き、文化表現、ラジオのプログラミング、また海を越え、米国大学機関へネットワークを広げている。
大阪大学では10月、2日間にわたり多文化社会に関する討論会が開かれた。カリフォルニア大学バークレー校など各地の大学研究者や活動家を集めた。来年4月には若い世代を対象とした討論会をカリフォルニアで予定している。
「沖縄や基地問題と同じく、タブーともされてきた多文化社会の話題へ取り組み、肌の色、存在の受け入れ、両親について話し合う」機会の場となっていると、須本さんは自負する。
多文化社会に関する専門家の間では、「単一民族」として見られがちな日本の姿は、第二次世界大戦後に生まれたという考えがある。
アイヌ民族や琉球民族は戦前の日本によって吸収され、また、台湾や韓国は1945年まで日本の植民地だった。
今日の日本での多文化主義についての話題は、外国人を受け入れる「国際化」に関するものが多い。実際の日本は多文化国家として成立しているが、一般社会の間でまだ認識が薄いとの指摘がある。須本さんも問題を懸念するひとりだ。
「ミックスルーツの市民、日系人や日本人が、『外人』、『現地民』という『幻想』なく生活できれば」と須本さん。「こういった概念は無意識的なものが多く、教育の現場や子育てを通して相互理解を深めていくべきだと思います」
この問題はさまざまな社会で見かけることができる。米国日系社会でも同様だ。コミュニティーにおける議論の機会、そして多文化社会に関する研究はより重要なものとなっている。
MRJに関してはwww.mixroots.jp、もしくはshakeforward@gmail.comまで。
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