「パワースポット」を求めて各地に出かける人々は相変わらず多いようだ。人気のある神社に行くと人の多さに圧倒されてしまう。

 日本は「万物に神宿る」として「山」や「木」そして人の手によって作り上げられた「物」に対しても敬意と感謝を以て接するといった国であるが、どうもこうした本質的なメンタリティーを見失いつつあるというのが、当世日本人事情ではないだろうか。

 物作りの現場を訪れると、どこか神々しさを感じることがある。職人さんの真剣な眼差しだけではない、長年の思いや完成に対する祈りを吸収した工作機械にさえ神が存在するようだ。

 かつて日本が日米繊維交渉の末、国内の工場を次々に閉鎖しなければならなくなった時、女工さんが一升瓶を持ってきて織機にじゃぶじゃぶとかけ始めたのだという話を聞いたことがある。これはまさに神聖なものに対しての振る舞いと言えるだろう。

 また、多くの企業が「作業にあたる際には家庭の悩みを持ち込まないように」「そのためには家族を大事にするように」などといった標語を掲げているのを見るが、これもやはり煩悩を捨てて作ることに集中するという意識から生まれた日本人独特の考え方ではないだろうか。

防衛装備品の輸出を真剣に検討する時が来ている

 とにかく、この日本の製造業が今、厳しい逆風下に置かれている。その原因は為替や原材料費の高騰など様々にあるが、根本は私たち日本人がいつの間にか「物作り」の尊さを忘れ、安い物を「買ってくる」方がお得だと考えるようになったことが大きいように思う。

 このことは、物作りの国ニッポンというアイデンティティーを失うばかりでなく、景気をますます萎縮させるだろう。日本はもっと製造業を活性化させ、世界に出ていくべきなのではないだろうか。

 わけても防衛装備品の製造には、数千社に及ぶ国内企業が関わっている。この分野にも輸出に向け道を開くことを真剣に検討する時が来ている気がする。